KDDI、万博の通信対策を強化 混雑エリアに5Gミリ波中継器を設置し工期8割短縮

2025年10月3日、KDDIは大阪・関西万博の来場者急増に対応するため、会場内の混雑エリアに5Gミリ波中継器を8月29日に設置したと発表した。
設置工期を通常の8割以上短縮し、1.5Gbps超の高速通信を実現する。
KDDI、万博会場に5Gミリ波中継器を設置 混雑エリアで通信品質を大幅改善
KDDI株式会社は、大阪・関西万博における通信需要の高まりに対応し、会場内の主要エリアに5Gミリ波中継器3台を新たに導入した。
設置場所はEXPOアリーナ Matsuri、ウォータープラザ、ポップアップステージ西の3カ所で、特に人流が集中する区域を重点的にカバーする。
5Gミリ波中継器は小型・軽量で、光回線を敷設せずに運用できる特長を持つ。
そのため、基地局工事と比べて工期を約80%以上短縮でき、設置はわずか1日で完了するという。
これにより、突発的な通信需要に即応する車載型基地局とともに、短中期的な需要変動への柔軟な対応が可能となった。
KDDIはこれまでも、開幕前から会場内外に5G Sub6基地局を整備し、DB-MMU(※1)を搭載した高性能基地局を導入してきた。
さらに、入場ゲートなど混雑が想定される箇所に車載型・可搬型基地局を展開。
GPS位置情報を活用する「KDDI Location Analyzer(※2)」によって人流を可視化し、通信が不安定になる恐れのあるエリアを特定した上で中継器を配置した。
これらの対策により、EXPOアリーナでは下り1.5Gbps超、上り400Mbps超の通信速度を実現。
5Gミリ波の通信量は設置前と比べて約8倍に増加し、全体の通信トラフィックが分散されることで、会場全体の通信品質向上が確認された。
※1 DB-MMU:Distributed Baseband Multi-User MIMOの略。多数の端末を同時接続し、高速通信を効率的に行う基地局技術。
※2 KDDI Location Analyzer:GPS位置情報をもとに人流を解析するKDDIの分析ツール。イベント運営や都市計画に活用されている。
5Gミリ波活用が示す通信インフラの進化 イベント運営の新基準に
KDDIが採用した5Gミリ波中継器は、通信インフラの機動性と即応性を高める実践的な事例といえる。
特に短期間で設置可能な特性は、大規模イベントや災害対応、地方自治体の臨時通信網構築にも応用できる可能性がある。
一方で、ミリ波通信は高周波ゆえに直進性が強く、障害物に弱いという技術的課題も残る。
これを克服するためには、今後もDB-MMUなどの高効率基地局技術と組み合わせた最適運用が求められるだろう。
今回の実証は、通信の安定性が来場者体験の質を左右する時代において、通信事業者がイベント運営の裏側で果たす役割を浮き彫りにした。
万博後も、都市イベントや観光地での通信品質向上に向けたモデルケースとして波及が期待される。











