山形V.カレッジがAI×売り場教育を開始 地元ドラッグストアと実地連携

2025年9月30日、山形市の専門学校「山形V.カレッジ」は、購買データやAIを活用した売り場づくりの教育プログラムを開始した。地元ドラッグストアと連携し、学生が実店舗で販促企画を立案・実行する内容で、地域発の実践型データ教育として注目できる。
データとAIで売り場改革 学生がリアル店舗で挑戦
山形市の専門学校山形V.カレッジは、ドラッグストア「ヤマザワ薬品」や一般社団法人データマーケティング教育機構(東京都)と連携し、購買データやAI分析を基にした売り場づくり教育を本格的に開始した。
授業は2026年1月まで全30回を予定し、データ分析から企画立案、効果検証までを体系的に学ぶことができる。
初回授業は9月30日に報道陣へ公開され、13人の学生が受講した。
ヤマザワ薬品の担当者が陳列や販促の工夫を説明し、購買行動と売上の相関分析を解説した。学生たちは今後同社の清住町店を拠点に、地域特有の購買傾向を踏まえた売り場を自ら設計し、販促キャンペーンも実施する計画だ。
学生からは「(店舗で)実践的に学べる機会は、社会に出るまでなかなかない。積極的に自分のアイデアを出して企業の内部をつかむことを学習していきたい」との声が聞かれた。
ヤマザワ薬品の鈴木譲部長も「学生がもつ新鮮で柔軟なアイデアに非常に期待している。地域のお客に響く魅力的な売り場が出来上がればいいとわくわくしている」と語った。
地域DX人材の育成へ 教育現場と企業連携が鍵か
今回のプログラムの狙いは、データドリブン(※)な意思決定を現場で体得することだろう。座学中心の従来教育から脱却し、企業と学生が協働で課題解決に挑む「実装型学習」へ転換する取り組みといえる。
また、本プログラムは地方専門学校におけるDX教育の新たなモデルケースとも言える。購買データの分析力だけでなく、AIを用いた仮説検証やマーケティング戦略立案の実践経験を得られる点が強みだ。
こうした試みは、地元企業にとっても大きなメリットをもたらす可能性がある。
学生の柔軟な発想を取り入れることで、店舗運営の課題発見や顧客体験の向上につながり得る。
一方で、教育と実務の連携を持続させるためには、企業側の受け入れ体制やデータ管理体制の強化も不可欠となるだろう。
今後成果が可視化されれば、他地域への横展開も視野に入るかもしれない。
AIリテラシーと現場力を兼ね備えた人材を育成する動きは、人口減少下の地方経済にとっても重要なカギとなると考えられる。
地域密着型の教育現場が、デジタル人材育成の最前線として存在感を高めつつあると言える。
※データドリブン:経験や勘だけに頼らず、売上データや顧客の行動データなど、収集した具体的なデータに基づいて意思決定やアクションを行うこと