バイナンス、金融機関向け暗号資産ソリューション提供へ 自社ブランドで暗号資産取引が可能に

2025年9月29日、暗号資産取引所大手のバイナンスは、銀行や証券会社が自社ブランドで暗号資産取引を展開できる「CaaS(Crypto-as-a-Service)」の提供予定を発表した。
金融機関が複雑なシステム構築を行わずに参入可能となる仕組みで、第4四半期中に一般提供を開始する見込みだ。
金融機関がブランド維持したまま暗号資産取引参入可能に
バイナンスが発表した「CaaS」は、ホワイトラベル型と呼ばれるソリューションの一種である。
ホワイトラベル型とは、ある企業が開発した製品やサービスを、他社が自社ブランドで販売・提供できる仕組みを指す。
バイナンスによるCaaSは、ユーザーから見えるフロントエンドは各金融機関が独自に設計できる一方で、バックエンドの取引、流動性、カストディ、規制対応、決済処理といった基盤をバイナンスが支える仕組みとなる。
金融機関にとって大きな利点は、短期間でのサービス立ち上げが可能になる点である。
自社で複雑な取引インフラを構築する必要がなく、既存顧客に暗号資産サービスを追加できる。
CaaSではバイナンスと同じ種類の暗号資産取引が利用でき、バイナンスの豊富な取引量を活かして、売りと買いがスムーズに成立しやすく、取引価格の差も小さく抑えられる。
金融機関は、世界中の投資家が集まるバイナンスの市場を利用できるため、売買が滞らずに成立しやすく、安定した価格で取引を実行できる。
加えて、顧客管理や手数料設定を行えるダッシュボードやAPIも用意され、柔軟な運用が可能な点も特徴だ。
規制対応面では、KYC(本人確認)や取引監視APIが組み込まれ、顧客資産を分離管理するサブアカウントやウォレットの利用も認められる。
先行アクセスは9月30日から認可を受けた金融機関向けに開始され、非公開デモやバイナンスとの直接対話を通じて利用が検証される。
年内第4四半期に一般提供される予定で、対象範囲は段階的に広がる見込みだ。
伝統金融と暗号資産の融合進む一方、規制リスクも
今回のCaaS導入は、伝統的金融機関が暗号資産市場に参入するハードルを大きく下げる可能性を秘めている。
既存の顧客基盤を持つ銀行や証券会社が自社ブランドで取引を展開できれば、暗号資産の利用拡大が進み、市場の信頼性向上にも寄与すると考えられる。
一方で、金融機関がCaaSを導入した場合、バイナンスの技術・流動性への依存度が高まることになり、万一のトラブル時にはサービス全体が影響を受けるリスクがある。
また、各国で規制強化が進む中、暗号資産サービスの提供に関する法的要件は流動的であり、金融機関が新規参入する際には監督当局との調整が不可欠となるだろう。
とはいえ、CaaSの登場は「金融と暗号資産の融合」を加速させる契機となり得る。
今後は規制環境の変化を見据えつつ、どの金融機関が最初に参入し、どのような競争環境が形成されるかが注目される。











