イオレ、スラッシュと提携 暗号資産金融子会社「Neo Crypto Bank」設立へ

2025年9月29日、東証グロース上場のイオレが、シンガポール拠点のスラッシュビジョンとの資本業務提携を発表した。
同時に、暗号資産金融事業の拡大を目的とした子会社「Neo Crypto Bank合同会社」の設立も明らかにしている。
イオレ、暗号資産事業強化へ スラッシュ株式を取得
イオレは、スラッシュビジョン(以下、スラッシュ)との間で暗号資産金融事業に関する資本業務提携契約を締結した。
スラッシュは、日本初となる国内法準拠型のステーブルコイン対応クリプトクレジットカード「SlashCard」を提供予定の企業であり、セルフカストディ方式を採用している点が特徴とされる。
今回の契約に基づき、イオレは第三者割当増資を通じてスラッシュの普通株式を取得する。
取得予定日は2025年10月31日で、総額約2億400万円を投じ、8,082株(持分比率5.05%)を保有することになる。
さらにイオレは、暗号資産の取得・保有やレンディングを推進する中期経営計画に沿って、新会社「Neo Crypto Bank合同会社」を設立する。
この会社は、暗号資産の運用収益獲得や、将来的なDeFi(※)へのアクセスを見据えた次世代金融プラットフォームの中核を担う位置づけとなる。
両社の提携内容には、ユーザー資産をイオレのレンディングサービスに接続する仕組みの共同開発、日本円からUSDC・JPYC等ステーブルコインへのオンランプとオフランプ機能の構築、SlashCard起点でのサービス導線設計などが含まれる。
将来的にはカード残高を利回り獲得に活用する機能や、両社共通のロイヤリティ・プログラムも導入予定である。
※DeFi:Decentralized Financeの略称。ブロックチェーン上で仲介者を介さず金融取引を行う仕組み。
提携がもたらす利便性拡大と収益機会、リスクは規制動向か
イオレとスラッシュの提携は、ユーザーにとって利便性の高いサービスを提供する大きな一歩となり得る。
特に、セルフカストディ方式による資産管理は、セキュリティと透明性の両立を可能にし、従来の中央集権的取引所に依存しない新しい利用体験を広げると考えられる。
また、Slash Card残高を利回り獲得に活用できる仕組みや、両社のエコシステムをまたぐロイヤリティ・プログラムの導入は、ユーザーの参加意欲を高める要因となるだろう。
これにより、イオレは利用者との接点を拡大し、安定した収益源を確保する可能性がある。
一方で、暗号資産事業は価格変動や規制変更といった外部要因に大きく左右される。
ステーブルコインの法的位置づけや税制の扱いが変化すれば、事業モデルそのものに影響が及ぶリスクは避けられない。総じて、今回の提携は事業成長に資するメリットが多く含まれているが、規制環境の動向を見極める慎重な対応が不可欠だと言える。
利用者にとっては利便性向上が期待されるものの、サービスの持続性が確保されるかは今後の政策判断にかかっている。