日立、NVIDIAと協業しグローバルAI Factory発表 Physical AI実装を加速へ

2025年9月26日、日立製作所は、米NVIDIAのリファレンスアーキテクチャを採用した「AI Factory」をグローバル規模で構築すると発表した。米国、EMEA(欧州、中東、アフリカ)、日本に展開され、最先端GPUやAIプラットフォームを統合した基盤となる。
日立、NVIDIA技術を採用し次世代AI Factory始動
AI FactoryはPhysical AI(※)の研究開発と導入を加速させる狙いで設計された。
基盤を支えるのは、NVIDIA Blackwell GPUを搭載したHGX B200システムを採用する「Hitachi iQ」、RTX PRO 6000 Server Edition GPUを備えた「Hitachi iQ M Series」、さらに「NVIDIA Spectrum-X Ethernetネットワークプラットフォーム」である。
このインフラには、企業向けAI基盤「NVIDIA AI Enterprise」や産業レベルのデジタルツイン構築を可能にする「NVIDIA Omniverse」が統合される。これにより、センサーやカメラから取得した情報を解析し、自律的に行動するAIモデルを短期間で開発可能となる。
発表にあたり、日立CEOの德永俊昭氏は「Hitachi iQを活用することで、日立のAIイノベーションがさらに加速します。」と述べ、副社長の阿部淳氏も「地域や組織を越えた『真のOne Hitachi』としての運営が可能となり、HMAXに代表されるようなPhysical AIのイノベーションを加速させるシナジーを生み出します。」と強調した。
NVIDIAのJustin Boitano氏も、産業革命を牽引する新たな基盤として期待を寄せ、データをインテリジェンスへ変換する役割を評価している。
今回の取り組みは、日立のデジタル変革基盤「Lumada 3.0」の中核を担い、OTとITを融合した強みを活かしつつ、モビリティやエネルギーをはじめとした多分野でのHMAXソリューション拡大を後押しするとみられる。
※Physical AI:現実世界のセンサーや機械と直接連携し、環境を認識・推論・行動する人工知能のこと。デジタル空間にとどまらず、物理的な課題解決に応用される点が特徴。
Physical AIが拓く新市場 効率化とリスクの両面に注目
AI Factoryの登場は、企業の業務効率化や社会インフラの最適化に大きく貢献すると考えられる。高度なシミュレーションとデジタルツイン技術により、交通網やエネルギー供給網の設計精度が向上し、運用コスト削減や安全性向上が期待される。
また、グローバルに分散されたAI Factoryは、地域間の格差是正や人材流動性の向上を後押しするメリットを持ち得る。低遅延で高性能なリソースを世界中のエンジニアが共有できる点は、研究開発力の底上げにつながると見られる。
一方で、急速なAI導入は技術依存の高まりを招くリスクもある。
物理環境に深く介入するAIが不具合や誤認識を起こした場合、影響は産業全体に及ぶ可能性があるため、堅牢な検証体制の確立が不可欠になるだろう。
今後は、日立とNVIDIAの協業が他社の動向にも波及する可能性が高い。
AIインフラ構築を巡る競争は加速し、産業界全体でPhysical AI市場の拡大が進むと予測されるが、その持続性はセキュリティや運用コストの制御にかかっていると言える。