米CFTC、デリバティブ市場でトークン化担保推進 ステーブルコインも活用対象に

2025年9月23日、米商品先物取引委員会(CFTC)は、デリバティブ市場でステーブルコインを含むトークン化担保の利用を促進する新たなイニシアチブを開始すると発表した。
規制当局が市場インフラにおけるデジタル資産の役割を明確化する動きとして注目される。
CFTC、トークン化担保の利用を正式に検討開始
CFTCが発表した新たな取り組みは、暗号資産関連の規制整備を加速する「クリプト・スプリント(Crypto Sprint)」の一環に位置づけられる。
対象はデリバティブ市場における担保資産であり、従来の現金や証券に加え、トークン化された資産やステーブルコインの利用可能性を検討するものだ。
キャロライン・D・ファム代理委員長は、ステーブルコインを担保として組み込む重要性を強調し、トークン化市場がすでに定着しつつある現状を踏まえ、規制当局としても前進する必要があるとの姿勢を示した。
今回の発表では、Coinbase、Crypto.com、Ripple、Circle、Tetherなど業界大手企業の賛同コメントも紹介されている。
特に、7月に成立したステーブルコイン規制の「GENIUS法(※)」を背景に、規制の枠組みを前提とした実用化に向けた期待感が強まっている。
Tetherのパオロ・アルドイノCEOは、米国が金融市場におけるリーダーシップを維持するための重要な一歩だと評価した。
CFTCは、10月20日までデリバティブ市場での「トークン化された担保の利用」に関するパブリックコメントを募集している。
また、これまでにDCM(Designated Contract Market)での現物暗号資産契約取引解禁に向けた検討を進めていると報道されたほか、2025年8月末には国外取引所が米国居住者にアクセスを提供する際の登録手続きを整理した「FBOTアドバイザリー」を公表している。
※GENIUS法:2025年7月に米国で成立したステーブルコイン規制法。発行体の準備金管理や監督体制を義務付け、米国内での安定的な利用環境を整備することを目的としている。
市場競争力と規制リスク、両面の影響に注目集まる
トークン化担保の導入は、市場参加者にとって効率性と透明性を高める契機となる可能性がある。
特に、決済スピードや担保管理の合理化はデリバティブ取引におけるリスク軽減につながる。
一方で、担保としてのステーブルコイン利用は、発行体の信用リスクや流動性管理の問題を新たに生じさせることも想定される。
業界側にとっては、規制当局が明確なガイドラインを示すことで制度的不確実性が減少し、資産管理や取引戦略の構築が容易になる利点がある。
特に米国においては、規制の枠組みが国際競争力を左右するため、CFTCの動きは海外市場へのシグナル効果も持つだろう。
ただし、制度設計の過程で過剰な制約が加われば、市場の流動性を損ない、逆に米国外への資本流出を招く懸念も残る。
公募コメントを通じた業界との対話は、今後の規制枠組みを形づくるうえで重要となる。
米国がデジタル資産を市場インフラに統合する方向へ動き出したことは明らかであり、その実装過程における柔軟性と安定性の両立が問われるだろう。
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