AIが再生するK-POPアイドル 韓国映画「ジェンフルエンサー」撮影開始

2025年9月17日、韓国のコンテンツ制作会社「MooAm」が心理サスペンス映画「ジェンフルエンサー」の本格撮影を開始したと発表した。同作は生成AIで理想のK-POPアイドルを再創造する物語を描き、長編映画としては初めて全編の半分をAI映像で構成する試みとして注目されている。
半分をAI映像で構成する革新的長編映画が始動
映画「ジェンフルエンサー」は、アイドルを夢見ながらも事故で挫折した主人公イ・ジンが、生成AIを通じて理想のアイドル像「ジナ」を再創造していく過程を描く心理サスペンスである。韓国コンテンツ振興院が主催する「2025年AI映像コンテンツ制作支援事業(長編)」に選ばれた作品であり、韓国の長編映画としては前例のない挑戦とされる。
主人公イ・ジンを演じるのは、ドラマ「イルタ・スキャンダル」で知られる俳優ペ・ユンギョン。欲望と混乱に翻弄される役柄に挑み、演技の転換を予告している。さらにベテラン俳優イ・サンスクや、ドラマ「浪漫ドクター キム・サブ」に出演したムン・ジインも参加し、作品に厚みを加える。
音楽監督には作曲家ナンシーボーイが起用され、映像と調和する楽曲制作に取り組む。撮影は2025年9月末に開始され、2026年に韓国国内外での公開が予定されている。
AI映画の可能性と倫理課題 映像産業の転換点に
生成AIの導入は、映画制作においてコスト削減や映像表現の多様化といった効果が期待できる。特に韓国映画はグローバル市場で存在感を高めており、AI技術を組み込むことで国際競争力をさらに強化できる可能性がある。
また、従来では不可能だった映像演出を短期間で実現できる点は、制作者や観客双方にとって新鮮な体験となり得る。
しかし、その一方で懸念も存在する。AIが人間の演技や表現を代替するようになれば、俳優やスタッフの労働環境に影響が及ぶ可能性が懸念される。
さらに、高精度のAI映像が現実と区別しづらくなるほど進化した場合、観客の受容性や著作権の取り扱いといった倫理的課題が表面化する恐れがある。
映画「ジェンフルエンサー」は、こうした期待とリスクの両面を内包する試金石的な存在になると考えられる。
韓国発のこの試みが世界の映像産業に波及すれば、AIと人間の創造性がどのように共存するかを問い直す転換点となる可能性が高い。
公開後の評価は、AI映画の未来を占う重要な指標になるだろう。