xAI、低コスト高速モデル「Grok 4 Fast」公開 推論対応と長文処理を強化

2025年9月19日、イーロン・マスク氏が率いる米xAIは、大規模言語モデル「Grok 4 Fast」の提供を開始した。
高コストを要する推論処理を効率化し、200万トークンの長文処理機能を備えた新モデルで、Webやモバイルアプリで無料提供されている。
推論と非推論を統合した「Grok 4 Fast」登場
xAIが発表した「Grok 4 Fast」は、従来のGrok 4と比べてコスト効率と処理速度を大幅に改善した新型LLMである。
最大の特徴は、単一のモデル内で推論モードと非推論モードを統合した設計にある。これにより、単純な文章生成から高度な論理的推論までを柔軟に切り替えながら実行できる仕組みになった。
さらに200万トークンという大規模なコンテキストウィンドウを実装し、長文や複雑な文脈を一度に処理することが可能となった。
Web検索やX(旧Twitter)の検索機能も組み込まれ、外部情報との接続性が高まっている点も注目点だ。
性能面では、ベンチマークでGPT-5(High)や従来のGrok 4に匹敵、あるいは上回るスコアを達成したという。
同等性能を維持しながら「運用コストを98%削減した」と公式に説明されており、コストパフォーマンスに優れている。
コストが下がったことで、価格設定も大幅に引き下げられている。入力100万トークンあたり0.2ドル、出力100万トークンで0.5ドル、キャッシュ済み入力は0.05ドルと、従来に比べ大幅に低価格化された。
さらにトークン効率が40%改善されたことで、リアルタイム処理や大規模データ分析など、即応性が求められるビジネス用途への展開が進むと考えられる。
このモデルはgrok.comやGrokアプリ(iOS・Android)、OpenRouterなどで当面無料で開放され、幅広いユーザー層が試せる環境が整えられている。
低価格化が開く応用拡大 競争激化も
軽量型のモデルの利点としては、従来は研究機関や一部の大企業に限られていた高度な推論型AIが、幅広い企業や開発者に普及する可能性が高まる点が挙げられる。
特に金融、ヘルスケア、顧客対応といった領域では、長文処理と高速推論を低コストで利用できるメリットは大きい。
一方で、競合環境は激しさを増す。
OpenAIやAnthropicなど既存大手が強みを持つ中、xAIは「安価で高性能」という戦略で差別化を狙うが、他社が追随すれば価格競争が起こる可能性もある。
また低価格化は収益構造への影響も避けられず、無料提供をいつまで維持できるかは不透明だ。
今後は、予定されているマルチモーダル機能やエージェント機能の追加が市場での競争優位を左右するだろう。
ユーザー体験の拡張と商用サービスとしての持続性を両立できるかが、xAIにとって最大の課題になると見られる。