豊明市、スマホ使用1日2時間以内を推奨する条例を可決

2025年9月22日、愛知県豊明市議会は市民のスマートフォン等の適正使用を促す条例を可決した。施行は同年10月1日からで、全国でも例の少ない「使用時間の目安」を明文化した条例である。
豊明市条例、睡眠確保を重視
豊明市が可決した条例は、市民のスマホ利用を「自由かつ健康的に行える環境」を整えることを目的としている。
背景には、日本人の慢性的な睡眠不足問題がある。
厚生労働省は小学生に9〜12時間、中高生に8〜10時間、成人にも6〜8時間の睡眠を推奨しているが、現状では十分に確保できていないと指摘されている。
条例第4条では、スマホの使用時間を「1日2時間以内」とする目安を示し、市民に適正利用を促している。
ただし対象は余暇時間に限定され、仕事や学習、通勤通学などは含まれない。市は「2時間を超えても権利を制限するものではない」と強調しており、柔軟な運用を前提にしている。
また、附帯決議として「市民の自由と多様性の尊重」「誤解を招かない丁寧な説明と情報提供」「子ども、保護者との連携と支援」「継続的な市民からの意見集約の機会の確保」「条例の効果検証と見直しの仕組み」の5項目が盛り込まれた。
市長の小浮正典氏は「条例はスマホ等の使用について子どもだけでなく、保護者も含めた家庭でのルールを決めるよう促すとしています。」と述べ、家庭内での話し合いによるルールづくりを呼びかけた。
条例施行の影響と家庭・社会への波及効果を考察
今回の条例は、市民の生活リズムや睡眠習慣の改善を狙うと同時に、家庭でのコミュニケーション促進につながる可能性がある。
子どもが自ら使用時間を調整する習慣が身につけば、夜間の過剰利用による学業や心身への影響を抑制できるだろう。
社会的には、スマホ依存への関心を高める契機となり、教育現場や医療機関での生活習慣指導に影響する可能性がある。
市外でも同様の取り組みを喚起させるかもしれない。
一方で、制限が目安であるため、家庭や個人の運用次第で効果のばらつきが生じるリスクもある。子どもだけでなく保護者自身の使用時間を見直す契機としなければ、条例の意図が十分に反映されない場合も考えられる。
今後は、市の啓発活動や附帯決議に基づく意見集約の仕組みによって、条例の実効性や改善点が明らかになるだろう。生活習慣の改善とテクノロジー利用の最適化の両立を模索する動きとして、自治体間での事例共有なども期待できそうだ。