Luma AI、推論型動画モデル「Ray3」を発表 Adobeや電通デジタルと連携し世界展開へ

2025年9月18日、米Luma AIは世界初の推論型動画生成モデル「Ray3」を発表した。
HDR対応の高精細出力や高速試作モードを備え、Adobeや電通デジタルとの提携を通じて映画・広告業界への導入が進む見通しである。
Luma AI、世界初の推論型動画モデル「Ray3」を公開
Luma AIは新たに公開した「Ray3」を、自社の生成AIプラットフォーム「Dream Machine」に実装した。
Ray3はこれまでの生成モデルと異なり、テキストや画像を統合的に理解し、推論を行いながら動画を構築する仕組みを備える。
ユーザーの意図を解釈し、自身の出力を評価・修正できる点が特徴だ。
技術面では、映画制作や広告制作の国際基準であるACES2065-1 EXR形式に準拠した10〜16ビットのHDR(※)動画を生成可能だ。
従来のモデルが標準的な映像出力にとどまっていたのに対し、Ray3はプロダクションレベルの映像品質を満たす。
さらに、アイデア検討を最大20倍速で行える「Draft Mode」を備え、短時間で複数の候補映像を試作し、そのまま高解像度に仕上げることができる。
Luma AIのAmit Jain CEOは「生成モデルは、強力ではあるが知性的ではないスロットマシンのような存在だった。だがRay3は意図を理解し、自身の出力を評価し、結果を洗練させることができ、生成される動画の精度と品質を大幅に向上させる」と強調する。
AdobeはFireflyアプリにRay3を統合し、世界初の外部展開パートナーとなった。
日本では電通デジタルが独占的に導入し、広告制作の効率化と個別化を進める方針だ。
※HDR(High Dynamic Range):映像の明暗差や色域を拡張し、肉眼に近い表現を可能にする技術。ACES2065-1 EXRは映画・映像業界で用いられる国際的なHDR標準規格。
映像制作の革新と課題 創造力の拡張か依存のリスクか
Ray3の登場は、映像産業における大幅な効率化と品質向上をもたらす可能性が高い。
特に広告分野では、ブランドごとのニーズに即した映像を迅速に生み出すことが可能となり、キャンペーンの機動力が格段に増すと期待される。
Adobe Fireflyへの統合は、クリエイターが既存の制作ワークフローにRay3を直接組み込めることを意味し、普及拡大のスピードを加速させるだろう。
一方で、創造過程をAIに大きく依存することへの懸念も残る。
AIが生成する映像が一見高品質であっても、文化的背景や倫理的文脈を十分に反映できるかは依然として課題だ。
Luma AIやHUMAIN Createはガードレールの強化を強調しているが、現場での運用においては検証と調整が不可欠になるだろう。
また、従来は専門知識や多大な労力を要したHDR制作が自動化されることで、映像業界のスキル構造にも変化が訪れる可能性がある。
AIの補助によってクリエイターはより高度な企画や演出に注力できる反面、技術習熟の必要性が薄れ、職能の空洞化につながるリスクも存在する。
Ray3は確かに映像制作の未来を切り開く技術であり、グローバル規模での採用も進むと見られる。
しかし、その成果を最大化するには、AIと人間の役割分担を再定義し、創造性と倫理性の両立を図る仕組み作りが求められると言える。
Luma AI プレスリリース:https://lumalabs.ai/press/ray3