イートロEU、MiCA規制下でドイツ参入 暗号資産サービス提供を正式認可

2025年9月16日、米小売取引プラットフォームのイートロは、欧州子会社イートロEUがドイツで暗号資産サービスを提供する認可を取得したと発表した。
EUの新規制MiCAの枠組みを活用した展開で、同国では10月末から利用可能になる見通しだ。
イートロEU、ドイツで10月末から取引サービス開始
イートロは今年2月、キプロス証券取引委員会(CySEC)を通じてEU域内で暗号資産サービスを提供できるライセンスを取得していた。今回のドイツ参入はそのライセンスを実際に行使する大規模展開となる。
発表によれば、イートロEUは10月30日頃からドイツ国内の顧客に暗号資産取引サービスを直接提供する予定である。
同社はこれまで分散型台帳技術(DLT)(※1)を利用した金融サービスを併用してきたが、移行に伴いDLTファイナンスの利用は終了する。
ただしユーザーの既存資産やポジションは保全され、取引そのものは引き続きイートロのプラットフォームで継続可能とされる。
利用者は改訂後の利用規約に同意することでサービスを継続でき、現時点で資産の保管体制に変更はないという。
MiCA(Markets in Crypto Assets Regulation)(※2)はEU全域で統一的に暗号資産を監督する制度であり、規制の明確化によって投資家保護や市場の透明性向上が期待される。
MiCAに完全準拠しつつも、イートロEUは「MiCAトレーディングプラットフォーム」に分類されないため、取引が規制外の仕組みで行われる可能性があるとのことだ。
さらに将来的には、イートロEUがカストディ(資産の保管業務)を直接担う可能性も示唆されている。実現すれば、ドイツのユーザーはより多くの暗号資産にアクセスできる体制が整うとみられる。
※1 DLT(分散型台帳技術):複数の参加者が共有する形でデータを管理する技術。ブロックチェーンもその一種で、暗号資産や金融取引の基盤に活用されている。
※2 MiCA(暗号資産市場規制法):欧州連合が2024年12月に施行した暗号資産の包括的規制枠組み。暗号資産サービスプロバイダーに対し、ライセンス取得や消費者保護を義務付ける。
MiCA準拠が進む欧州市場、利点と懸念の両面が存在
イートロEUのドイツ参入は、MiCA規制を背景とした制度的安定性を確保するという点で大きな利点を持つ。ユーザーは統一的なルールの下で安心して取引できるようになるため、透明性の高い市場環境が整いそうだ。
加えて、EU最大の経済圏であるドイツでの事業展開は、ブランド力や顧客基盤の拡大に直結する要素となるだろう。
さらに、カストディ業務を将来的に担う可能性は、サービスの幅を広げ、利便性を一層高める要因となり得る。
一方で、デメリットも少なくない。
MiCA準拠は事業者にとってコスト負担を伴い、収益性を圧迫するリスクがある。
そのうえ、同社が「MiCAトレーディングプラットフォーム」として分類されない点は、規制上のグレーゾーンを残す要因となり、利用者保護に懸念を生む可能性がある。
また、ドイツ当局による監督体制が整わない場合、市場健全性を損ねることも考えられる。この点については、ユーザー保護や市場の健全性に課題を残すだろう。
ドイツ金融当局は今後、取引実態の監督体制をどこまで整備できるかが問われると予想できる。
EU内の暗号資産ビジネスは規制強化の下で再編が進みつつあり、イートロの動きはその流れを象徴する事例と位置付けられる。
今後の市場拡大とリスク管理の両立が、同社の持続的な成長を左右することになるだろう。
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