日本人の7割が直面する「医療迷子」解消へ Ubieが医療AIパートナー提供開始

2025年9月16日、Ubie株式会社(東京都中央区)は、AIと会話しながら医療支援を受けられる医療AIパートナー「ユビー」の提供を開始した。
体調不良時の行動に迷う「医療迷子」解決を目指す新サービスである。
Ubie、医療AIパートナー「ユビー」公開 72%が経験する医療迷子解決を狙う
Ubieは2020年から、気になる症状から病名や医療機関を検索できる症状検索エンジン「ユビー」を提供し、現在は月間1,300万人が利用する規模に拡大した。
これまでの利用者調査で、体調不良時に「症状認知」「情報収集」「受診」などで迷う「医療迷子」が72%にのぼることが判明し、インターネット検索後も76.5%が次の行動に進めず、42%が「立ち往生」する実態が明らかになった。
こうした課題を受け、同社は個人に寄り添う新サービス「医療AIパートナー ユビー」を開発した。
症状検索が一度の情報提供に特化していたのに対し、新サービスは継続的な対話を通じて利用者の状況を理解し、診療科選択や受診後のフォローまでを支援する。
β版テストでは、受診を迷っていた人の66.3%が受診を決断し、95.2%が医師への症状伝達に活用する結果が得られた。
開発には50名以上の医師が関わり、公的機関や専門サイトのみを情報源とするなど、信頼性にも配慮されている。
同日、Ubieは「医療迷子レスキュープロジェクト」の発足も発表した。
社会全体で課題解決に取り組むための調査や知見共有の枠組みを整備する方針を示した。
AIが拓く医療アクセス改革 行動支援の広がりと課題
医療AIパートナー「ユビー」の導入は、医療アクセスの課題を抱える日本社会に新たな可能性をもたらすだろう。
単なる情報提供にとどまらず、利用者が「次にどうすべきか」を具体的に行動へと移せる点は、既存の検索型サービスを超える意義があるといえる。
受診意欲を高め、医師との対話を円滑化する効果が示されたことは、国民の医療行動を変える契機となり得る。
一方で、AIが提示する情報に過度に依存するリスクや、誤情報を避けるための継続的監視体制の確保が不可欠である。
最終的な診断や治療は医師が行う必要があり、AIが万能ではない点は常に意識すべきだろう。
また、利用者データの収集・活用にはプライバシー保護と透明性が求められる。
マイナポータル連携による服薬・受診歴の把握は利便性を高めるが、個人情報管理の在り方が問われるだろう。今後は、サービス普及と同時に「案内力」をさらに高め、医療迷子を半減させることが目標とされる。
医療費適正化や人手不足といった制度的課題が深刻化するなかで、AIが伴走する医療支援が定着すれば、患者と医療現場双方にとって大きな価値をもたらす可能性がある。