秋元康氏、AIに敗北 AKB48新曲対決で「思い出スクロール」が支持集める

2025年9月15日、日本テレビ系特番「秋元康×AI秋元康 〜AKB48新曲対決〜」が放送され、AKB48の新曲制作をめぐり秋元康氏とAIによる楽曲対決が実施された。一般投票の結果、AIが手掛けた楽曲が勝利し、秋元氏が敗れる形となった。
秋元康氏とAIが楽曲対決 投票結果はAIに軍配
今回の企画は、2025年で結成20周年を迎えるAKB48の新曲制作をテーマに実施された。
秋元康氏本人と、彼の作詞スタイルを学習したAI「AI秋元康」がそれぞれ楽曲を手掛け、作成者を伏せた状態で公開された。
対象曲は「セシル」と「思い出スクロール」の2曲で、一般投票は9月7日まで行われた。
結果発表では、秋元氏が手掛けた「セシル」が1万535票を獲得した一方で、AI秋元が制作した「思い出スクロール」は1万4225票を集めた。差は約3700票で、AIの作品が上回った。放送中、元AKB48の指原莉乃氏は「え~!うそでしょ!!」と驚きの声をあげ、秋元氏も「残念だよね。全力で書いたのに」と悔しさをにじませた。
さらにAI秋元は「もしかしたら本物の僕は今回負けたことで、何か新しいものを見せようとしたのかもしれない」とコメントし、秋元氏が「やかましいわ!」と笑いを誘う場面もあった。
ネット上では「衝撃の結果」「どちらも名曲」「まさか秋元さんが負けるとは」といった反応が相次ぎ、話題となっている。
AI勝利が示す楽曲制作の未来 創作の役割はどう変わるか
今回の結果は、AIが人間の創作分野において一定の評価を得られる段階に到達したことを示している。
秋元康氏の長年の経験と感性を模倣したAIが支持を集めたことは、エンタメ業界におけるAI活用の可能性を強く印象づけた。ファン投票による選択は「新鮮さ」や「共感」を基準とする傾向があり、AIがそのニーズに応えられることを証明したと言える。
一方で、AIに頼ることのリスクも指摘できる。
人間の感情や時代背景に基づく「文脈」は完全に再現できない可能性が高く、作品が均質化する懸念がある。また、作詞や作曲を担う人材の立場が揺らぐことで、クリエイティブ産業の労働環境に影響を及ぼすリスクも無視できない。
ただし、AIは制作プロセスを補完する存在として大きな利点を持ち得る。
短期間で多数のアイデアを提示できるため、アーティストやプロデューサーが選択肢を広げる上で有用となるだろう。
AI秋元が語ったように、今回の敗北を契機に人間が「AIでは生み出せない価値」を追求する動きが強まる可能性もある。
本件に限らず、今後の音楽業界はAIと人間の共創を前提とした新しい表現の時代に入ると考えられる。ファンの嗜好を即座に反映するAIの強みと、人間特有の感性が融合すれば、これまでにない音楽体験が生まれることになるだろう。