コインベース、SECによる文書破棄を追及 裁判所に制裁措置を正式申立て

2025年9月12日、米暗号資産取引所コインベースは、米証券取引委員会(SEC)がゲンスラー前委員長の文書を破棄していたとして、連邦裁判所に制裁を求める申立てを行った。
規制当局の信頼性を揺るがす事態として、業界に波紋が広がっている。
コインベース、ゲンスラー氏関連文書の破棄を批判
コインベースのポール・グレワル最高法務責任者は9月12日、SECがゲンスラー前委員長のテキストメッセージを保存義務に反して破棄していたと指摘した。
SEC監査報告によれば、2022年10月から2023年9月にかけて該当文書が失われたという。
グレワル氏は、コインベースが数年前から規制判断に関するすべての通信を求めていたにもかかわらず、SECが資料を破棄したことは「国民の信頼を損なうもの」だと批判。
裁判所に対し、制裁措置と関連文書の即時提出を求める書類を提出した。
さらに同氏は、企業には記録管理の不備で数十億ドルの罰金を科してきた機関が、自ら同様の違反を犯すことは「二重基準」とも述べている。
実際、監査官の調査ではSEC上級職員40人以上のデバイスから記録が失われた可能性が示され、21台のデバイスにはデータ破壊が確認または疑われるフラグが付けられていた。
コインベースは2024年6月、リサーチ企業History Associatesと共に、SECを相手取り情報公開法に基づく訴訟を提起していた。
仮想通貨規制に関する調査記録の開示を求めていたが、SECは資料提供に消極的だった。今回の申立てはその延長線上にある。
Web3関連企業からは、規制の一貫性と透明性が欠けることで事業活動に不確実性が増しているとの声が上がっている。
Trade Dog Groupのリシャブ・グプタ氏は、制裁が科されれば、規制当局の証拠管理そのものに信頼性を求める新たな基準となると指摘する一方、訴訟戦略の複雑化を懸念している。
SEC文書破棄問題が投資家心理に及ぼす影響
コインベースがSECによる文書破棄を追及し、制裁を求めた動きは、規制当局の信頼性を揺るがす重大な事態であると言える。
特に、ゲンスラー前委員長に関連する記録が保存義務に反して失われた点は、規制判断の透明性を根本から疑わせるものであり、国民や投資家にとっては深刻な不安要因となっている。
メリットとしては、この問題が表面化したことで規制当局に対し証拠管理の厳格さを求める新たな基準が生まれる可能性がある点だ。
業界にとっては透明性確保の圧力が強まり、長期的には事業環境の予見可能性を高める効果が期待できる。
一方で、訴訟戦略の複雑化により紛争の長期化や不確実性の拡大を招き、Web3関連企業の事業展開に足かせとなる恐れが懸念されている。
今後は裁判所が制裁を科すか否かが焦点となり、いずれにせよ規制当局の証拠管理体制を再構築する動きにつながる可能性が高いと考えられる。