文科省、生成AIで余震予測を高精度化へ 古文書や観測網活用し防災情報を迅速発信

2025年9月11日、日本の文部科学省が来年度から生成AIを活用した余震推計研究に着手することが報じられた。古文書や過去の観測データを学習させることで、防災情報の即時発信と新たな地震現象の解明を目指す。
文科省、AI導入で地震分析の即日化を目指す
文部科学省は、巨大地震発生後の余震規模を高精度に推計するため、生成AIを活用する研究を開始する。
従来は人手による解析に1週間以上を要していたが、AIを導入することで地震発生から1日以内に余震の見通しを示す技術を確立し、防災対応の迅速化を図る構想である。
研究費として来年度予算に約3億円を計上し、具体的には過去のマグニチュード8〜9級の大規模地震データを学習させる。これにより、何日間どの程度の余震に注意が必要かといった情報を、より正確かつ早期に発信できる体制を整える。
また、旧式の地震計が残した100年前の波形記録も画像データとして読み込み、震源位置や巨大地震の周期の再推定に活用する。
近代観測以前の「歴史地震」についても、古文書の記録を大規模言語モデル(※)で解析し、未解明の現象を明らかにする狙いがある。
さらに、今年秋には南海トラフ地震の早期検知を目的とした全長8000キロメートルの海底観測網が稼働予定であり、収集データとAI解析を組み合わせることで、ゆっくりすべりなど新たな兆候の把握も可能になると期待される。
※大規模言語モデル(LLM):膨大なテキストデータを学習し、自然言語の理解や生成を行うAI基盤技術の一つ。
迅速化の期待とリスク AI防災研究の可能性と課題
AI導入によって、従来の人手では困難だった膨大な地震データの解析が短時間で実現する点は大きな利点だろう。
被災地への迅速な情報提供は、避難行動の判断やインフラ復旧の優先順位決定に直結し、防災体制全体の強化につながると考えられる。
また、古文書や紙媒体の地震記録をAIに学習させる取り組みは、過去の知見を現代技術で再活用する試みでもある。地震の発生周期や震源域の特定精度が向上すれば、巨大地震の長期的予測にも寄与する可能性が高い。
一方で、AI解析の精度や信頼性をどう担保するかという課題も残りそうだ。
学習データの質や偏りによっては誤推計を招く恐れがあるため、政策決定に直結する情報として用いる際には、十分な検証が欠かせないだろう。
さらに、防災研究におけるAIの活用が拡大すれば、データ収集・管理体制の強化や倫理的な利用指針の策定も求められるはずだ。
技術革新による即応性と科学的信頼性の両立こそが、今後の実装における最大の焦点になると言える。