OpenAI、オラクルと44兆円規模契約か AI計算資源確保へマイクロソフト依存から脱却模索

2025年9月10日、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、米OpenAIがオラクルと約5年間で3000億ドル(約44兆円)相当のクラウド契約を結んだと報じた。2027年から計算資源の供給を受ける見通しで、同社のインフラ戦略に大きな転換が生じつつある。
OpenAI、オラクルと巨額契約 AI計算資源の多角化へ
報道によれば、OpenAIはオラクルとの間で今後5年間にわたり3000億ドル規模のクラウドサービス契約を締結したとされる。
開始は2027年と見込まれており、生成AIの急拡大に伴う計算資源不足への対応策とみられる。これまでOpenAIはマイクロソフトのクラウド基盤に大きく依存してきたが、供給の逼迫を背景に新たなプロバイダーを模索してきた経緯がある。
オラクル側では同日に発表した四半期決算でクラウド事業の強気な見通しを示し、株価が急騰した。創業者で会長のラリー・エリソン氏は資産が1000億ドル以上増加し、世界一の富豪に浮上したと伝えられている。
両社はすでに7月、米国で進める大規模インフラ開発「Stargate」プロジェクトで協力を発表済みだ。
OpenAIとソフトバンクグループを中核に、オラクル、マイクロソフト、NVIDIA、Armなどが参加し、4年間で5000億ドル(約73兆円)を投じてデータセンターを拡充する計画である。
AI計算資源争奪戦 独占依存回避とリスク分散の行方
OpenAIがオラクルと手を組む背景には、生成AIの爆発的普及による計算能力の逼迫があると考えられる。
AIモデルの高度化と利用拡大に伴い、必要なGPUやデータセンター容量は年々跳ね上がっている。Microsoftのクラウド「Azure」への依存が限界を迎えつつあるなか、複数プロバイダーから供給を確保することは事業継続性の観点でも不可欠といえる。
こうした動きは、クラウド業界全体の競争環境にも影響を及ぼすと予想できる。
オラクルはこれまでAWSやAzure、Google Cloudに比べて存在感が限定的だったが、大規模AI需要を取り込むことで地位を一気に高める可能性がある。
一方で、単一の契約額が巨額に達することは、OpenAI自身の財務体制や資金調達にも新たな圧力を加えると考えられる。
また、AI計算資源の確保は地政学的な意味合いも強まっている。
Stargateプロジェクトに象徴されるように、米国主導でのインフラ投資は中国勢との競争を見据えた国家戦略の一環でもある。供給の多様化は技術的リスクを下げる一方で、調達コストの上昇やプロジェクト間の利害調整といった課題も避けられないだろう。
今後、OpenAIの選択が他のAI企業に波及し、クラウド市場の勢力図を塗り替える可能性がある。独占的な依存からの脱却が持続的な成長の鍵になるかどうか、引き続き注目したい。