電通デジタル、AIエージェント活用基盤を提供開始 データ統合で企業変革を後押し

2025年9月10日、株式会社電通デジタルは、AIエージェントを最大限に活用するためのデータ基盤構築支援サービスを提供開始すると発表した。マーケティング現場の業務効率化と顧客理解の深化を通じ、企業の事業変革を包括的に支援する狙いだ。
電通デジタル、AIエージェント基盤の構築支援を開始
電通デジタルは、企業がAIエージェントを活用するためのデータ基盤構築サービスの提供開始を正式に発表した。
マーケティング戦略設計やデータ分析に強みを持つ同社が、電通グループ(dentsu Japan)の独自データ資産を組み合わせ、設計から運用までを一気通貫で支援する。
新サービスの核となるのは、AIが企業内外のデータとツールを横断的に活用できる環境の整備である。
具体的には、メタデータを付与した一元管理やベクトルデータベースの構築により、高速で柔軟なデータ検索を実現する。
また、MCP(※1)を基盤に据えることで、CDP(※2)などの社内外のシステムやAPIを共通化されたプロトコルで連携させ、生成AIの業務適用を拡張する仕組みを整える。
さらに、企業の1stパーティデータだけでなく、dentsu Japanが保有する大規模消費者調査データなどと連携することで、従来は難しかった精緻な顧客インサイトの抽出が可能となる。これにより、施策効果の予測、カスタマーサポートの最適化、レポーティングの自動化といった幅広い領域でAI活用の効果が期待される。
加えて、同社の統合マーケティングソリューション「∞AI(ムゲンエーアイ)」との連携により、AIエージェントとの対話を通じた事業変革支援も視野に入れている。
※1 MCP(Model Context Protocol):生成AIが外部システムやデータと安全に接続し、共通ルールで利用するための標準的な接続プロトコル。
※2 CDP(Customer Data Platform):企業が保有する顧客データを統合・管理し、マーケティングや分析に活用する基盤システム。
企業のDXを加速 顧客理解深化とリスク管理が焦点に
今回の取り組みは、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させる重要な契機となると考えられる。
AIエージェントが業務フローを横断的に実行する環境を整備すれば、マーケティング活動は迅速かつ柔軟に変化へ対応できるようになる。アイデア創出や効果予測といった知的作業にAIを活用することで、現場担当者はより戦略的な判断に集中できるだろう。
一方で、データ統合が進むほど情報セキュリティとプライバシー保護の重要性は高まる。特に顧客データを扱うCDPや外部APIとの連携は、利便性とリスクが表裏一体となる。
MCPの導入はセキュアな統括を可能にするが、技術運用やガバナンスに不備があれば逆に脆弱性を抱える可能性がある。
AIエージェントの導入が進めば、現場担当者の負担は軽減し、戦略的意思決定にリソースを集中できるようになると予想される。その結果、企業間のAI活用格差は事業成果に直結し、競争軸の一つとして定着する可能性が高い。
今後は、データ品質の保証や説明可能性の確保といった課題に対応しながら、持続的な活用モデルを築けるかどうかが試金石になると考えられる。
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