米金融大手キャンター、金で元本保護するビットコインファンド開始 価格変動リスクを抑えた新投資手法

2025年9月9日、米キャンター・フィッツジェラルド・アセット・マネジメントは金を活用した元本保護型ビットコインファンドを提供開始した。
ビットコインの値動きに部分的に連動しながら、下落時は金価格に基づき投資元本を保護する仕組みで、機関投資家向けの新たな商品となる。
下落局面で金を基準に元本を守る仕組み
米金融大手キャンター・フィッツジェラルド・アセット・マネジメントは、5月に予告していた金保護付きビットコインファンドを正式にローンチした。
同社は運用資産150億ドルを誇り、機関投資家向けの多様な商品を展開してきたが、仮想通貨と金を組み合わせた設計は同社にとっても初の試みである。
このファンドは5年満期を前提に、ビットコイン価格が上昇した場合は最大45%までのリターンを享受できる。
一方、下落局面では金価格を基準に元本100%の保護が働き、投資家はビットコイン特有の急激な価格変動に対して一定のリスクヘッジを行うことができる。
ブランドン・ラトニック会長は「ビットコインが投機的リスクから戦略的機会へと認識が変わっていることを反映した商品」と語り、この商品がその転換を象徴すると位置づけた。
また、資産運用部門責任者ビル・フェリ氏は「リスク資産が高値圏にある中、タイミングと保護が重要」と強調した。
この商品は適格投資家を対象とし、ヘッジファンドや年金基金など、リスクを制御しつつデジタル資産市場に関与したい機関投資家に向けて設計されている。
ビットコイン単独の投資では実現しにくい「安全とリターンの両立」を目指す枠組みだと言える。
機関投資家に新選択肢 リスク軽減と成長機会を両立
今回の金保護付きビットコインファンドは、仮想通貨市場に慎重な姿勢をとる投資家にとって、大きな意味を持つ出来事だと考えられる。
最大のメリットは、急落時にも元本が保護される点であり、従来「高リスク資産」とされてきたビットコインへの参入障壁を下げる効果があるとみられる。
特に長期保有を志向する年金基金などにとっては、従来の金融資産と同列に検討し得る商品となりうる。
一方で、リターン上限が45%に制限されることは投資家にとってデメリットとなるかもしれない。ビットコインの急騰局面では利益が限定されるため、高リスク・高リターンを志向する投資家層には物足りなさを残す可能性がある。
また、金の価格水準に依存するため、金市場の変動が間接的に影響する点も見逃せない。
それでも、リスクを抑制しつつ成長市場に参入できるという利点は大きいだろう。
米国の規制環境が整備されつつある中で、こうした商品は「投資家保護」と「市場拡大」のバランスを実現する役割を担うと考えられる。
今後は、他の金融機関が類似商品を開発し、金や他のコモディティを組み合わせた新たなハイブリッド型投資の流れが広がる可能性もあるだろう。