新経済連盟、仮想通貨税制改正を要望 分離課税や損失繰越でWeb3振興を狙う

2025年9月10日、一般社団法人新経済連盟(新経連)が2026年度税制改正に向けた提言を公表した。暗号資産に関して分離課税の導入や損失繰越控除の適用を求め、日本のWeb3産業競争力を高めることを目的としている。
新経連、暗号資産税制の抜本改正を政府に提言
新経済連盟は、国内ITやデジタル分野の新興企業が中心となり活動する経済団体で、代表理事は楽天グループ会長の三木谷浩史氏が務めている。
今回の提言では「税と成長の好循環」を掲げ、投資促進やスタートアップ支援、産業競争力の強化を三本柱とした政策を提示した。
暗号資産の税制に関しては、現在最大55%に達する総合課税を問題視し、株式投資と同様に20%の申告分離課税(※)へ変更すべきだと主張している。
さらに、損失を翌年以降に繰り越して控除できる制度の導入なども要求した。
特に注目されるのが、暗号資産同士の交換における課税方法の見直しだ。
現行制度では交換のたびに課税されるため利便性が低いが、これを法定通貨に換金した時点に限定すれば実用性は飛躍的に向上するとしている。
暗号資産デリバティブ取引の利益についても、同様に分離課税を適用すべきだと求めた。
加えて、ビットコインなどをETFで扱えるよう特定資産に追加することや、現在一律2倍に制限されているレバレッジ規制をリスクに応じて柔軟化する制度への移行が盛り込まれた。
こうした包括的な改革によって、日本発のトークンエコノミー基盤の形成を加速させたい考えだ。
※申告分離課税:給与所得などと切り離して課税する仕組みで、株式や先物取引の利益に適用される。一律20%の税率が一般的で、総合課税に比べ納税負担が軽減される。
優遇税制で投資呼び込みも 財政と規制の両立が課題
暗号資産の税制優遇は、投資家の参入を後押しし、日本市場の活性化に直結する可能性が高い。
特に申告分離課税の導入や損失繰越控除は、株式投資と同様の扱いを与えることになり、健全な市場拡大を促進すると期待される。
また、課税タイミングの変更は実務面での大幅な改善をもたらすだろう。投資家が無駄な税務コストを負わずに済むため、再投資の余力が広がるとみられる。
スタートアップ企業にとっても資金調達の環境が整い、国内に拠点を構える動きが加速する可能性が高い。
一方で、優遇措置は国の税収減につながる懸念もある。暗号資産市場は価格変動が激しく、投資家保護の観点からも一定の規制が必要だと言える。
無制限の優遇は投機的行動を助長する恐れがあり、政策立案者にとってはバランスが求められる。
今後は金融庁や財務省を中心に、成長戦略と財政健全化の両立をいかに図るかが焦点となりそうだ。新経連の提言は投資環境改善への第一歩となるが、制度設計次第で日本のWeb3競争力が大きく左右されると言える。