コナミ、AI音声を使用した一部動画を公開停止 クリエイターへの敬意を強調

2025年9月9日、コナミデジタルエンタテインメントは、パリで開催された「Yu-Gi-Oh! World Championship 2025(WCS2025)」で実施したAI実況トライアルの一部動画を非公開にしたことを発表した。
音声合成モデル「Anneli」に無断学習疑義が浮上したことが理由とされる。
コナミ、AI実況トライアルの一部動画を非公開化
コナミデジタルエンタテインメントは、カードゲーム「遊戯王」世界大会WCS2025のマスターデュエル部門で行ったAI実況企画の一部動画を公開停止した。
同社は9日、問題となった動画で使用された音声合成モデル「Anneli」に、無断学習由来とされるデータが含まれているとの疑義が報じられたことを理由に挙げた。
調査の結果、該当アーカイブの非公開を決定したと説明している。
今回のWCS2025では、日本語や英語を含む複数言語でAIによる実況を行う「AI実況トライアル」が実施された。
対象となったのはDAY1の試験配信で、公式YouTubeチャンネルを通じて発信されていた。
非公開となったのは、日本語TTS(※)で「Anneli」を使用した映像である。
Anneliはオープンソースモデルとして広く利用されてきたが、作者が学習元の音声について、成人向け恋愛アドベンチャーゲームの音声を使用しながら個別の許諾を取っていないことを明らかにし、SNSを中心に問題提起が拡散された。
その結果、Hugging Face上からモデルが削除され、関連ツールの公開も停止されるなど影響が広がっている。
コナミは今回の対応にあたり、「当社はすべてのクリエイターに敬意を払っている」と強調した。
また、現時点で「マスターデュエル」本体へのAI実況機能の実装は行っていないと付け加えている。
※TTS(Text to Speech):文字情報を合成音声として出力する技術。音声合成やナレーション生成に広く利用される。
AI音声利用の波紋 透明性と権利配慮が不可欠に
今回のコナミの判断は、AI技術の積極活用と著作権・権利関係の調整がいかに難しいかを示した事例といえる。
AI実況は多言語展開を迅速に行える利点を持ち、国際大会のようなグローバルイベントでは特に有用である。
しかし、学習データが不透明であれば、著作権侵害やクリエイターへの敬意欠如といった批判に直結する危険性がある。
ゲーム業界では、AIを用いた音声生成や翻訳技術が急速に普及している。
ユーザーにとっては利便性の向上や新しい体験の提供につながる一方で、元データに関わる権利者の了承が不十分な場合、信頼性を大きく損なうリスクがある。
特に大手企業が利用する際は、社会的影響力が大きいため、一層の透明性と責任が求められる。
一方で、今回の件を契機に、業界全体でAIモデルの利用指針が見直される可能性が高い。
オープンソースモデルの信頼性検証や学習データの開示義務が進めば、利用側にとってもリスクを回避しやすくなる。
コナミの迅速な対応は批判回避の意味合いもあるが、同時にAI活用における今後の標準を示す先例となると考えられる。
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