三菱電機、米セキュリティ企業「Nozomi Networks」を過去最大規模で買収 Serendie事業拡大へ

2025年9月10日、三菱電機は米国のOTセキュリティ企業Nozomi Networksを完全子会社化すると発表した。
買収額は8億8300万ドル(約1290億円)で、同社として過去最大規模のM&Aとなる。
買収完了は2025年内を予定している。
三菱電機、Nozomiを過去最大規模のM&Aで完全子会社化
三菱電機は9月10日、米国サンフランシスコ本社のOT(※)セキュリティベンダーNozomi Networksを完全子会社化すると明らかにした。
既に7%の株式を出資済みであったが、今回新たに93%を取得し100%子会社化する。
買収金額は8億8300万ドル(約1290億円)で、同社が手掛けたM&A案件としては過去最大規模となる。
Nozomi Networksは2016年に設立されたセキュリティベンダーで、スイスに開発拠点を持ち、315人の従業員を抱える。
世界75カ国以上で1000社超の導入実績があり、売上高の約4割を米国、約3割を欧州が占める。
2022年以降の年平均成長率は33%を超え、2024年の売上高は7500万ドル(約110億円)に達した。
特にSaaS事業の拡大は顕著で、全体の粗利率は70%以上となっている。
三菱電機は2027年度までに1兆円のM&A投資枠を設定しており、今回の買収はその一環となる買収だ。
Nozomi Networksは今後も独立した運営を維持するが、三菱電機のデジタル基盤「Serendie」との事業シナジーを目指す方針が示されている。
※OT(Operational Technology):工場やインフラ設備の制御・運用に用いられる技術の総称で、ITとは異なり物理的な設備稼働を直接制御する技術を指す。
OT市場の成長を追い風にSerendie事業拡大を狙う
今回の買収は、急拡大するOTセキュリティ市場を背景にしている。
三菱電機は、社会インフラや製造業を中心に需要が増していることから、OTセキュリティの市場規模は2025年に2兆9000億円、2035年には15兆1000億円に達すると見込んでいる。
自社の顧客基盤とNozomiのセキュリティ技術を組み合わせることで、この成長市場における競争力を高める狙いだ
メリットとしては、Nozomiの侵入検知や可視化技術、AI分析力を取り込み、三菱電機のFA(ファクトリーオートメーション)事業やインフラ事業の高度化に直結できる点があげられる。
これにより、データ収集・分析に基づく新サービスの創出や、エネルギーマネジメントへの応用も期待される。
SaaSモデルの強化は、グローバル展開を推進する要素ともなりうるだろう。
一方で、Nozomiの売上規模は110億円にとどまり、Serendie事業が掲げる2030年度1兆1000億円の目標に対する寄与は限定的である可能性がある。
シナジー効果をいかに早期に具体化できるかが成否の鍵を握るだろう。
セキュリティ強化とデータ利活用を両輪とした拡大戦略は、競合との差別化に直結しうる。
今後の展開次第では、Serendie事業全体の成長を大きく後押しする可能性がある。