防衛装備庁、洋上でのレールガン射撃に成功 高初速兵器開発で一歩前進

2025年9月10日、防衛装備庁は試験艦「あすか」に搭載したレールガンによる洋上射撃に成功したと発表した。標的船への命中や長射程射撃の成果を確認しており、詳細は同年度の防衛装備庁技術シンポジウムで報告予定である。
試験艦「あすか」でレールガン洋上射撃試験を実施
今回の射撃試験では、試験艦「あすか」に搭載されたレールガンから標的船への射撃や長距離射撃に成功し、将来的な実用化に向けた技術的進展が示された。
レールガンは電気エネルギーで弾丸を加速し、火薬を使用せずに発射する兵器である。防衛省は、将来的に毎秒2500メートル以上の初速を実現できると見込み、従来の火砲や戦車砲の初速を超える性能に期待を寄せている。
また、弾丸は誘導弾に比べ小型で探知されにくく、極超音速で飛翔するため迎撃を困難にするとされる。発射初速を自在に調整できる利点もあり、資料によれば砲身は120発以上の使用に耐えられるという。
なお、試験艦「あすか」は海上自衛隊の新装備評価を担う艦船であり、2025年4月には自衛艦隊司令官が視察し、研究進捗を確認していた。こうした組織的支援が背景にあり、研究成果を実際の洋上射撃につなげたとみられる。
高初速兵器の実用化がもたらす戦略的意義と課題
今回の射撃成功は、防衛装備庁が迎撃困難な高速兵器を自前で開発する技術的進展として評価できる。防空や対艦戦において従来の誘導弾に依存しない選択肢が生まれる可能性があり、日本の防衛戦略の幅を広げる効果が期待される。
また、火薬を用いない安全性や弾丸の小型化による低コスト化も注目され、長期的には防衛費の圧縮につながる可能性がある。弾薬補給や保管リスクを軽減できる点は、補給線が脆弱になりやすい海上作戦で特に有利だ。
一方で、解決すべき技術的課題は依然として多い。
艦艇への搭載性に直結する電源の小型化、連射に必要な急速充電、高性能な蓄電池や半導体スイッチ・コンデンサの確立などが必要となるだろう。
これらの進展がなければ、実戦配備は難しい状況が続くと考えられる。
今後、洋上射撃試験の成果がどこまで進展し、実運用段階に近づけるかが焦点になる。
米国や中国もレールガン開発を進める中、日本が独自に持続的成果を出せれば、国際的な安全保障環境での存在感を一層強めることになるだろう。