AI活用の「スマート除雪」特許取得 青森市専門家、交通データで優先度を8段階評価

2025年9月8日、青森県青森市の社会起業家・葛西章史氏がAIとデジタル技術を組み合わせた「スマート除雪」の特許を取得したことが報じられた。
交通状況や気象データを基に道路の除排雪優先度を8段階で評価し、効率的な除雪を実現する仕組みだ。
AIが道路状況を解析し、除雪の優先順位を提示
青森県は昨冬、災害級の豪雪に見舞われ、市街地では積雪が1メートルを超えた。除雪作業が追いつかず、道路交通や生活インフラに大きな影響が生じたことが、効率的な対応策の必要性を浮き彫りにした。
こうした中、青森市で除雪イノベーターとして活動する葛西章史氏が7月31日付で「スマート除雪」の特許を取得した。
この技術は、車載のスマートフォンやドライブレコーダーで撮影した映像を解析する「デジタルセンシング(※)」を中核とする。
AIは得られた路面情報と気象データを統合し、どの道路を優先的に除排雪すべきかを8段階で数値化。従来の目視パトロールによる判断のばらつきを減らし、限られた人員と予算で効率的に対応できる仕組みとなる。
さらに、AIは過去の道路データを学習し、今後どの地点で除雪が必要になるかを予測する機能も備える。除雪作業を事前に計画できることで、交通混乱の回避や除雪コストの抑制につながる可能性がある。
自治体の現場負担を軽減するだけでなく、住民の安全確保に直結する技術といえる。
※デジタルセンシング:スマートフォンや車載カメラなどで収集した映像を解析し、路面や周辺環境の状態を数値化する技術。除雪だけでなく道路補修や交通安全対策にも応用される。
雪国の社会課題解決へ 普及の壁と波及効果
スマート除雪が普及すれば、豪雪地帯における交通まひや経済損失の軽減に大きく寄与すると見込まれる。
AIによる優先度判定に基づき作業を行えば、従来の「均等除雪」ではなく「必要箇所に集中する戦略的除雪」が可能になり、限られた除雪機械や人員を最大限に活用できるだろう。
また、気象データと組み合わせた予測機能は、物流の停滞や通勤困難といった生活への影響を減らす効果も期待される。雪国の自治体にとっては、人口減少や高齢化により人手不足が深刻化する中で持続可能な除雪体制を確立する手段となるだろう。
一方で、実用化には課題も残る。
AIを活用するには大量の道路映像や気象データを継続的に収集・更新する仕組みが必要であり、自治体間でのデータ共有やプライバシー保護も論点となりうる。また、特許技術を実際に導入する際には、開発コストやシステム維持費が財政負担になる懸念もある。
それでも、豪雪対策の効率化は全国的な公共政策課題であり、青森市発の技術は他の雪国自治体へ波及する可能性が高い。普及の過程では、官民連携による実証実験が不可欠であり、データ収集やシステム運用を共同化する枠組みの整備が進むだろう。
AIが学習を重ねることで予測精度が向上し、将来的には「除雪の自動最適化」が現場で標準化する可能性に期待が高まる。
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