ベネッセ、小中学校向けに企業連携探究教材を無償配信 実社会課題を授業で学ぶ機会に

2025年9月8日、株式会社ベネッセコーポレーションは、小中学校向けICT学習ソフト「ミライシード」で活用できる新教材「オクリンクプラスですぐ使える!企業・団体コラボコンテンツ」の無償配信を開始した。
対象は国内のミライシード導入校1万校以上にのぼる。
11企業・団体と連携 探究的学習を支援する教材を提供
今回配信される探究教材は、ベネッセが11の企業・団体と連携して開発したものだ。
児童生徒にとって身近な企業が実際に取り組む社会課題や活動を題材としており、算数や社会、道徳、家庭科など幅広い教科にひも付けられている。
実社会の課題を「自分ごと」として捉え、協働的に解決を考える力を養うことが狙いである。
教材はカード形式で提供され、教員用の指導案が付属する。
さらにミライシード上の協働学習アプリ「オクリンクプラス」を用いて、発表資料やノート作成、意見交換やディスカッションなどを行うことができる。
教員がゼロから教材を準備する必要がなく、授業にすぐ導入できる点が大きな利点だ。
対象は小学1年生から中学3年生までと幅広く、算数の「時刻と時間」を鉄道事例で学ぶ東海旅客鉄道の教材や、金融・消費者教育をキャリア学習と掛け合わせた野村ホールディングスの教材、SNS利用のリスクを学ぶ岡山県警察の教材などがラインアップされている。
今後は三井不動産が提供する森林保全教材も秋に公開予定だ。
ベネッセは今後も、各教科と連携可能な多様な教材を順次拡充していく計画である。
探究学習の裾野拡大へ 教育現場に即効性と課題も
今回の取り組みは、教員の負担軽減と探究学習の普及を同時に実現する点で意義深い。
従来、探究的な授業は教材開発に大きな労力を要していたが、完成度の高いコンテンツを無償で利用できることで授業設計の効率が大幅に改善すると期待される。
ICT環境下で協働学習を行える点も、デジタルネイティブ世代の学習スタイルに適合している。
一方で、教材の内容が、企業・団体の広報的な色合いを帯びる懸念もある。
企業や団体が提供する教材は、社会課題をリアルに学ぶきっかけとして有用だが、教材利用にあたっては批判的思考を育む指導も不可欠と言える。
児童生徒が企業の活動をそのまま受け止めるのではなく、多様な視点から検討する姿勢を促すことが求められるだろう。
今後は、全国の教育現場での活用実績やフィードバックが鍵を握る。
成功すれば、教育と産業界を結ぶ新たな学習モデルとして定着し、探究学習の裾野を大きく広げる可能性がある。
ベネッセにとっても、教育ICT市場における競争力を高める契機になると考えられる。