パナソニック、使用済み家電から回収した銅スクラップを再資源化 自社製品に利用する循環スキームを発表

2025年9月8日、パナソニックくらしアプライアンス社はJX金属と共同で、使用済み家電から回収した銅スクラップを100%再資源化した電気銅を製品に再利用するスキームを運用開始したことを発表した。
国内大手家電メーカーとして、自社循環の確立は初の試みとなる。
再資源化銅を追跡可能にし製品へ安定供給
今回の取り組みでは、家電リサイクル法対象となるエアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機の4品目から銅スクラップを回収し、電気銅(※)へと再生する。
従来から電気銅を再生する仕組みそのものは存在していたが、これまで再生銅がどの程度自社製品に戻っているかを定量的に把握することはできていなかった。
パナソニックはこの課題を解決するため、JX金属が新たに導入した物量管理システムを導入することを決定した。
これによって、原料として供給したスクラップ相当分の電気銅が確実にパナソニック製品に使用されるよう管理する体制を整備する。
「スクラップのみを原料とした電気銅」を確実に調達・利用することが可能になり、資源循環の透明性と信頼性が大幅に向上した。
この再生電気銅は鉱石採掘や精錬に比べ、温室効果ガス排出量を大幅に削減できる特徴を持つ。
JX金属の試算によると、電気銅1トン当たり約2〜3トンのCO2削減効果があり、カーボンフットプリントの低減に直結する。
この仕組みにより、同社は従来以上に環境負荷を抑えた材料調達を実現する。
※電気銅:銅を精錬して得られる純度の高い銅で、銅線や銅管など多様な部品の原料となる。再資源化工程で得られる場合は、鉱石採掘を伴わないためCO2排出削減効果が大きい。
低炭素調達の拡大 循環型社会への波及効果も
今回のスキームは、単なる資源リサイクルにとどまらず、サプライチェーン全体の脱炭素化を加速させる可能性を秘めている。
リサイクル電気銅の利用が進めば、製造業の主要原料である銅の調達構造そのものが変化し、循環型社会の基盤づくりに直結するからだ。
メリットとしては、安定調達と環境負荷低減が両立できる点が大きい。
銅は世界的に需要が拡大しており、資源価格の変動リスクも大きい。
スクラップからの自給サイクルを確立することは、国際市況に左右されにくい安定的な調達戦略となる。
さらに、製品のカーボンフットプリント低減は企業価値の向上にも直結する。
一方で、スクラップ回収体制の拡充や高度な管理コストが課題となる可能性もある。
現時点では家電リサイクルに限定しているが、より多様な製品群に適用するためには物流・回収網の整備も不可欠になってくるだろう。
今後はパナソニックが回収体制を拡大し、JX金属がリサイクル技術を高度化することで実用範囲を広げていくことが期待される。
持続可能な社会を志向する中で、製造企業が次元循環の全体的なプロセスを責任を持って管理する姿勢を示した点は大きな意味を持つと言える。