TOPPANデジタル、金属パッケージ対応のICタグ開発 医療物流DXを加速へ

2025年9月8日、TOPPANデジタル株式会社は、金属を含む包装材でも安定的に読み取れるインデックスICタグを発表した。
医療製品の院内物流管理向けに11月から販売を開始し、医療現場の業務効率化とDX推進を狙う。
金属混在でも安定通信 新ICタグを発表
TOPPANデジタルは、病院における医療製品のSPD(※)管理を主な用途とする新しいインデックスICタグを開発した。
医療業界では、多数の薬品や器具を取り扱う中で、発注漏れや使用期限切れが生じやすく、業務負担の増大が問題視されてきた。
人手不足が深刻化するなか、限られた人員で正確な物流管理を行う仕組みが急務であり、RFIDを活用した効率化が注目されている。
ただし、従来技術ではアルミやプラスチック、紙など異素材が混在する現場で性能が不十分なケースが目立った。
今般、TOPPANデジタルは培ってきた汎用広指向性アンテナの技術を応用し、非金属・金属を問わず展開可能な設計を実現した。
独自のアンテナ設計により、数メートル単位の長距離通信を安定して実現したほか、ラベルの一部を突出させる構造を採用し、積層状態でも読み取り可能となった。
ラベル寸法は20×76ミリとし、印字スペースを確保しつつ作業性の改善を行った。
さらに、片側の糊をなくす仕様で、現場での貼付作業が従来より容易になった。
価格は1枚20円からで、100万枚を一括手配する場合の金額であり、印字やデータ書き込みの費用は含まれない。
※SPD:Supply(供給)、Processing(加工)、Distribution(流通)の略称で、院内物流管理システムまたはその業務を指す。
医療物流の効率化から他業界DXへ拡大も
今回の製品は、医療機関や医薬品物流企業にとって、業務の正確性と効率性を両立させる手段になると考えられる。
入出庫や棚卸の自動化が進めば、医療従事者の負担軽減や発注精度の向上につながり、患者への医療提供にも間接的な効果を及ぼす可能性がある。
特に、金属素材が混在する現場でも安定通信を実現できる点は、既存課題の解決策として評価できる。
一方で、初期導入コストやICタグの普及スピードには課題も残る。
現場ごとに異なる運用フローに対応するには追加の調整が必要であり、全面的な普及には時間を要する可能性がある。
それでも、TOPPANデジタルが掲げる2026年度売上目標20億円は、医療業界のニーズの高さを反映していると言える。
さらに、医療分野での実績が確立されれば、製造工場内の資材管理や消耗品追跡など、他業界への応用も進む見込みだ。
多様なパッケージに対応できる強みは、サプライチェーン全体のDX促進に波及効果をもたらすだろう。
今後は導入事例の積み上げが市場拡大の鍵になると考えられる。