大日本印刷、非構造化データをAIで整理 構造化AIチャットボットを発売

2025年9月5日、国内印刷大手の大日本印刷(DNP)は、企業内に散在する非構造化データをAIで構造化処理して活用できるチャットボット「DNPドキュメント構造化AIチャットボット」を同年9月26日に発売すると発表した。生成AIと独自技術を組み合わせた新製品である。
業務マニュアルや提案書をAIで構造化、横断的な検索や生成に活用
DNPが発表した「DNPドキュメント構造化AIチャットボット」は、社内に点在するWord、PowerPoint、PDF形式などの文書ファイルをAIが読み取り、構造化データとして内容を整理・変換する仕組みである。
これにより提案書や報告書、設計資料、業務マニュアルなど、従来AI活用が難しいとされていた非構造化情報をチャット形式で自在に検索・活用できるようになる。
同サービスはDNP独自の文書処理技術「DNPドキュメント構造化AIサービス」と拡張検索生成(RAG※)に対応した生成AIを組み合わせて構築されている。
製品の品質保証に関する過去事例の抽出や、顧客への提案書作成支援、自治体における問い合わせ業務の効率化など、多様な業務プロセスでの活用が見込まれる。
さらに組織やプロジェクト単位での運用が可能であり、チームメンバー間での情報共有や編集もサポートされる。セキュリティ面ではアクセス権限を柔軟に設定でき、情報漏えいリスクの抑制にも対応している。
このサービスは月額5,000円/ユーザー(5ユーザー以上から契約可)で利用可能。別途初期構築として文書構造化の作業費用が発生する。
価格体系はユーザー数に応じて変動し、柔軟なスケール展開が可能とされる。
※拡張検索生成(RAG):Retrieval-Augmented Generation。外部文書やデータベースから情報を検索し、それをもとに生成AIが応答を行う手法。従来の生成モデルに比べ、正確性と再現性の向上が期待される技術。
部門単位での導入も可能 安全性と業務効率化の両立へ期待と課題
今回のサービスは導入の容易さに加え、セキュリティを確保したうえでのチーム内共有機能が存在しているため、金融・製造・自治体など機密性の高い業界も利用しやすいと考えられる。AI導入に踏み切れなかった業界への普及も期待できるだろう。
一方で、初期の構造化作業には一定のコストや調整が必要であり、導入効果が定量的に測定できるかどうかが、普及のカギを握ると考えられる。また、生成AIの応答品質や情報の網羅性に対する期待と実態のギャップも、今後の継続的な改善ポイントとなるだろう。
企業の文書資産を「知識」として活用する流れが加速する中で、DNPの新サービスは、AI活用の裾野を一段と広げる可能性を秘めていると考えられる。