ゆうちょ銀行、デジタル通貨「DCJPY」導入へ 1円=1DCJPYで交換

2025年8月31日、ゆうちょ銀行が2026年度にもデジタル通貨「DCJPY」を導入すると報じられた。
貯金者の口座にひも付けて利用可能になる予定で、金融商品の決済や補助金支給手段としての活用が検討されている。
ゆうちょ銀行、DCJPYを導入し決済・補助金利用も視野
報道によれば、ゆうちょ銀行はインターネットイニシアティブ(IIJ)グループのディーカレットDCPが開発するデジタル通貨「DCJPY」を採用する。
利用者は自身の貯金口座にDCJPY用の口座をひも付け、希望額を1円=1DCJPYで交換できる仕組みになる。
当初はセキュリティ・トークン(ST)などの金融商品の決済で利用可能とされているが、将来的には地方自治体による補助金支給の手段としても応用を検討するという。
DCJPYは「トークン化預金」と位置づけられ、日本円に裏付けられて発行される。
既存の銀行預金と同等の価値を持つが、ブロックチェーンを基盤に運用される点が特徴である。
ステーブルコインがパブリック・ブロックチェーン上で発行されるのに対し、トークン化預金はパーミッションド・ブロックチェーン(※)で管理される仕組みだ。
ディーカレットは2024年9月に約63.5億円を調達しており、今回の導入により、ゆうちょ銀行の約1億2000万口座、200兆円規模の貯金が潜在的な基盤となる。
これにより、DCJPYは日本国内のトークン化預金市場において大規模な展開が可能となる見通しである。
※パーミッションド・ブロックチェーン:参加者が金融機関や認可事業者などに限定されるブロックチェーン。誰でも参加可能な「パブリック・ブロックチェーン」と対比され、セキュリティやコンプライアンス管理を重視する仕組み。
トークン化預金の普及がもたらす可能性と課題
今回のゆうちょ銀行によるDCJPY導入は、国内金融市場におけるデジタル通貨の普及を大きく前進させる動きといえる。
全国規模の利用者基盤を持つゆうちょ銀行が参入する意義は大きい。利用者には、従来の銀行預金と同等の安全性を維持しながら、デジタル証券購入や補助金受け取りといった利便性の高い新たな手段が提供されることになるだろう。
一方で、課題もありそうだ。
まず、セキュリティ・トークンが多く発行されるパーミッションド・ブロックチェーンとの相互運用性をどう確立するかが焦点になると考えられる。
また、補助金支給への活用を広げるには、自治体側のシステム整備や法規制対応が必要になるだろう。
さらに、ステーブルコインのように国際的な流通を前提とする仕組みではないため、利用範囲が国内に限定されやすい点も制約といえる。
それでも、JPYCのステーブルコイン認可を契機に国内市場は動きを加速させており、今回の導入はトークン化預金の社会的な信頼性を押し上げる可能性が高い。
金融インフラにおけるデジタル通貨の役割が拡大する中で、ゆうちょ銀行の事例は、国内における今後の制度設計や利用モデルの方向性を示す重要な転換点となるだろう。