米グーグルと豪AAP通信が生成AIに関する契約 ジャーナリズム活用で応答品質向上へ

2025年8月19日、オーストラリアの通信社AAPは、米グーグルが開発する生成AI「Gemini(ジェミニ)」の応答品質向上を目的としたコンテンツ提供契約を締結したと両社が発表した。
グーグル、豪通信社と提携し生成AIにリアルタイム情報を反映
AAPは自社のニュース記事や報道コンテンツをグーグルに提供し、生成AI「ジェミニ」に活用されることになる。これにより、ユーザーの質問に対するAIの自然言語応答に、より関連性の高い情報が組み込まれる見通しだ。
グーグルのオーストラリア・ニュージーランド地域ニュースパートナーシップ責任者ニック・ホプキンス氏は、この契約を「ジェミニの応答品質を向上させるためのリアルタイム情報を提供するのに役立つ」と説明した。
この契約の金銭的条件は公開されていない。
創立90年を迎えるAAPのエマ・カウドロイCEOは「AAPは一流で信頼できる報道機関だとの評判を強く裏付けるものだ」と述べた。
こうした動きは世界的にも拡大している。フランスのAFP通信も2025年1月、生成AI開発企業ミストラルと契約を締結し、自社記事をチャットボット応答に利用させる取り組みを開始している。
報道機関とAI企業の提携は今後さらに増える可能性が高いとみられる。
報道機関との協業拡大へ 信頼性確保と著作権リスクの狭間
生成AIと報道機関の提携は、AIの回答品質を高める大きな利点を持つ一方で、課題も残る。最大のメリットは、信頼性の高い一次情報がAIに組み込まれることで、誤情報の拡散を抑制できる点にある。これにより、AIが提供する応答の正確性が増し、ユーザー体験の向上につながると考えられる。
しかし、同時に著作権や報酬の問題は解決されていない。近年、AIが著作権で保護されたコンテンツを無断利用したとして、複数の報道機関がテクノロジー企業を相手取って訴訟を起こしている事例もある。今回の契約が透明性を持つ形で運用されなければ、業界全体での摩擦を生む可能性も否定できない。
今後は、AIメーカーがどのようにニュースコンテンツを利用し、報道機関に正当な対価を還元するかが焦点となると考えられる。提携によって両者の関係が「共存」へと進むのか、それとも「対立」の火種となるのかは、各国の規制や業界の合意形成にかかっていると言える。