吉本興業、数十億円規模のコンテンツファンド設立 人気タレントとAI活用で海外展開も視野

2025年8月18日、吉本興業は公式サイトで「コンテンツファンド」の組成を発表した。国内外から資金調達し、所属タレントが関与するコンテンツ制作を支援する計画だ。
吉本、数十億円ファンドで多様なコンテンツ制作へ
吉本興業は自社の事業拡大戦略の一環として、新たに「コンテンツファンド」を設立した。
調達する資金は数十億円規模にのぼり、出資元には国内外の企業も含まれるという。同社はこれを基盤に、多様なエンタメコンテンツの制作支援を本格化させる計画だ。
公式発表によれば、対象はバラエティ番組、映画、アニメ、ドラマ、ライブ、リアリティショー、縦型ショートドラマ、ウェブトゥーン、ゲームなど幅広い。
加えて、AIなどの先進技術を活用した新しいコンテンツにも取り組む方針を明らかにしている。
同ファンドの大きな特徴は、所属タレントを中心に据える点である。
明石家さんま、ダウンタウン、中川家、千鳥、かまいたち、マヂカルラブリー、チョコレートプラネット、渡辺直美、霜降り明星といった人気タレントに加え、若手芸人のプロデュース企画も展開する見通しだ。
さらに、スポーツ選手を題材としたドキュメンタリーやオーディション番組の制作も検討されている。
吉本は従来から国内エンタメ市場の中核を担ってきたが、今回は「番組フォーマット(※)」の海外展開も視野に入れている。
※番組フォーマット:番組の企画・構成・演出方法などを体系化したパッケージ。海外では現地の制作会社が同フォーマットを用い、ローカライズ版を制作する手法。
海外市場とAI活用がもたらす成長機会とリスク
今回のファンド設立は、吉本が国内市場にとどまらず、グローバル市場を明確に視野に入れ始めた動きであると考えられる。
特に番組フォーマットの輸出は、韓国のエンタメ企業が築いた成功例に近い戦略であり、日本発のカルチャーを世界に届ける一つの突破口になり得る。タレント力と制作ノウハウを持つ吉本にとって、この方向性は自然な進化と言える。
ただし、成功の鍵は「現地最適化」にあると思われる。
日本的なお笑いや演出がそのまま海外で受け入れられるとは限らないため、各国の文化や視聴習慣に適応させる工夫が不可欠だろう。
また、AIやデジタル技術をどう統合するかも重要であろう。単なる流行追随ではなく、制作効率や新しい表現手法を具体的に示す必要がある。
今後は、国内外の配信プラットフォームとの連携が進み、ファンドを通じて制作されたコンテンツがグローバルに展開される可能性が高い。その結果、吉本が日本のカルチャー輸出の新たな旗手となるかもしれない。
一方で、巨額投資に見合う成果を出せなければ、厳しい批判に晒される局面も訪れるだろう。