DGビジネステクノロジーがSaaS「Acsim」提供 AIによる要件定義でDX支援

2025年8月18日、デジタルガレージ傘下のDGビジネステクノロジーは、AIスタートアップROUTE06と業務提携し、AIによって要件定義を変革するSaaS「Acsim(アクシム)」をコマース事業者向けに提供開始したと発表した。
日本市場におけるEC開発やDX推進に新たな選択肢をもたらす動きとして注目される。
AIで要件定義を標準化 大規模開発のリスク低減を狙う
DGビジネステクノロジーは、エンタープライズ向けEC開発で培った業務要件対応力やプロジェクトマネジメント力を武器に、ROUTE06が開発した「Acsim」を活用したサービス提供を開始した。
「Acsim」は、自然言語での対話とノードUIを融合し、従来属人化しやすかった要件定義をAIが補完・強化する仕組みを備える。
課題抽出や改善方針の提示、プロトタイプ構築、設計書の自動生成まで一連の工程を支援するため、プロジェクト全体の品質向上とスピード加速が期待される。
背景には、要件定義工程における人材不足やスキルギャップがある。
要件定義は顧客の業務要件や目的を整理し、システムに必要な機能や条件を明確化する工程であり、属人化しやすい特徴がある。
特にEC事業者は、多様化する消費者ニーズや複雑化するシステム連携への対応を迫られ、要件定義の精度と効率性が重要課題となっていた。
DGビジネステクノロジーは、1,100件以上のEC構築で蓄積した知見と「Acsim」のAI機能を組み合わせ、上流工程から実装までを円滑に進める新しいDX支援モデルを提示する。
今後は、顧客内製プロジェクトや他パートナー主導の開発でも再現性の高い要件定義支援が可能となり、業界全体の開発基盤を底上げする狙いがある。
要件定義のDX化が広げる展望 効率化の追い風とリスクの両面
「Acsim」の導入は、属人性の高い要件定義を構造化データとして残せる点が大きなメリットだ。
設計情報が蓄積されれば、テストや運用改善までシームレスに活用でき、意思決定の精度を高められる。
さらに、迅速な要件整理はプロジェクトの遅延やコスト増を防ぐ効果があり、企業のDX推進を実務レベルで後押しする可能性がある。
一方で、AIに依存しすぎるリスクも無視できない。
要件定義は本質的に企業戦略や業務プロセスと密接に結びついており、AIが出力した設計を鵜呑みにすれば、現場実態との乖離を招きかねない。
専門家によるレビューや調整を組み合わせるガバナンス設計が不可欠となるだろう。
今後は、大手から中堅EC事業者への共同提案やPoCパッケージの提供を予定している。
さらに9月にはオンラインセミナーを開催し、具体的な活用事例や最新ツールとの連携方法を紹介する方針である。
要件定義の効率化は、単なるシステム開発の課題にとどまらず、日本企業のDX全体に影響を及ぼす可能性がある。
成功すれば、プロジェクト遂行の再現性を高め、国内外の競争環境において優位性を築くきっかけになると考えられる。