竹中工務店、AI導入で設計図面を整理 働き方改革と効率化を推進

2025年8月18日、建築設計ソリューションを提供するテクトムは、竹中工務店がAI技術を活用した「Tektome KnowledgeBuilder」を導入したと発表した。過去の設計図面をデータベース化し、設計業務の効率化と働き方改革を推進する狙いだ。
AIが過去の設計資産を整理し、検索性を向上
竹中工務店は、建築士や設計者が自然言語で指示するだけで情報資産を自動構造化できる「Tektome KnowledgeBuilder」を導入した。
このAIサービスは、図面や議事録などのデータを体系的に整理し、非エンジニアでも容易に情報を活用できる環境を提供する。再設計の削減や設計ミスの防止、新しいデザイン創出への応用が期待される。
同社は、技能労働者不足やデジタル化の加速といった業界環境の変化に直面している。
数十万ページ規模の図面データから必要情報を探す作業には膨大な労力を要しており、また、参考情報を人づてに確認するという非効率な作業も常態化している。
これらの課題に対し、情報資産を整備し、設計者の負担を軽減することが急務とされている。
本サービスの実証段階では、有志メンバーによるワーキンググループが竣工図(※)の構造化を試み、3カ月の検証を実施した。
設計者自身が抽出項目を定義し、過去の類似案件の検索や関連数値の一覧化を可能にしたことで、業務への即効性が確認されたという。
これにより、現場主導での情報活用が本格的に進み始めている。
竹中工務店は現在、より多くの竣工図データを取り込むことで、検索軸の多様化や使いやすさの向上を図る取り組みを進めている。これにより、過去プロジェクトから得られた知見が現行案件へ迅速に横展開され、再設計の削減や品質向上につなげる動きが活性化している。
※竣工図:建築工事完了後に作成される最終的な設計図面。実際の施工内容を正確に反映しており、維持管理や改修時に重要な役割を果たす。
ナレッジ活用が進む建築現場 創造性と効率の両立へ
今回のAI導入は、建築業界全体に広がる「知の再利用」の潮流を象徴するものといえる。
利点としては、膨大なデータを短時間で分析できることで設計者が創造的な業務に集中できる点が挙げられる。従来の確認作業に費やしていた時間を削減することで、新たな設計アイデアや革新的なデザインに投じられるリソースが拡大する可能性がある。
一方で、AIの判断基準や抽出結果がどこまで信頼できるか、データ整備の初期負荷がどの程度かかるかといった点においては、課題も残されていると思われる。
今後は、こうしたAI基盤を活用した建築ナレッジの蓄積が業界全体に波及する可能性もある。競合他社も追随すれば、設計業務の標準化や情報活用の高度化が進み、働き方改革と品質向上を両立させる新しい建築プロセスの実現が見込まれる。
竹中工務店の取り組みは、建築の未来像を先取りする実証的な試みとして注目されるだろう。