AIが蘇らせた独立運動家の笑顔 韓国・国立中央博物館で光復80周年展示

韓国ソウル市の国立中央博物館にて、光復80周年を記念する特別展が開催されている。
特別展では、AI技術を活用して独立運動家の顔を復元した展示も行われ、光復節前日の2025年8月14日には多くの来場者が詰めかけた。
AIが再現した独立運動家5人の笑顔に注目集まる
ソウル・龍山の国立中央博物館1階「大韓帝国室」前には、安重根(アン・ジュングン)、李奉昌(イ・ボンチャン)、尹奉吉(ユン・ボンギル)、柳寛順(ユ・グァンスン)、安昌浩(アン・チャンホ)ら5人の独立運動家の大型パネルが並んでいる。
だが、これらは実際に撮影されたものではなく、AI(人工知能)による復元である。
博物館は古い白黒写真をアップスケール(※)技術で高解像度化し、さらにAIを用いて自然な笑顔を生成することで、生前の記録にはほとんど残されなかった柔らかな表情を蘇らせた。特に、笑顔を浮かべた肖像は、従来の無表情な資料とは異なる印象を来館者に与えている。
会場では映像展示も行われ、5人が笑顔で手を振る姿が公開された。観覧した20代会社員は「非常にリアルに再現されていて驚いた」と感想を述べた。
博物館側は「無表情で正面を見つめる従来の写真が多かった独立運動家に、親しみのある笑顔を取り戻したい」と説明している。
この企画は、国史編纂委員会との共同で実施された「光復80周年・再び見つけた顔たち」展の一環で、今年初めから準備が進められてきた。
AIを活用した制作には約2カ月を要し、数度の試行錯誤を経て完成に至ったという。
※アップスケール:低解像度の画像をAIなどの技術で拡大し、鮮明化する手法。近年は古写真や映像の復元に広く用いられている。
歴史展示の新たな形 AI活用に広がる期待と議論
AIによる歴史的人物の表情再現は、従来の硬直した肖像を刷新し、若い世代に歴史をより身近に感じさせる効果が期待される。
来館者にとって「生きた歴史」に触れる体験は、独立運動の意義を自分ごととして再認識する契機になり得る。
一方で、懸念点も残る。
AIによる復元は「実在しなかった表情」を創作するものであり、史実の再現と創作の境界が曖昧になるリスクもある。過度に演出されたイメージが独り歩きすれば、歴史理解をゆがめる可能性は否定できない。
AI生成の映像は、事実とフィクションを分けて提示する姿勢が重要となるだろう。
今後は、独立運動家に限らず、多様な歴史的人物の復元にもAIが応用される可能性がある。教育現場や観光資源としての利用も視野に入るが、その普及には「表現の自由」と「史実への忠実さ」の両立が求められると言える。
AIが歴史と人々をつなぐ新たな媒介となるか、その在り方が問われている。
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