トランプ大統領、仮想通貨業界への差別的銀行取引拒否を禁止 公平アクセスを法制化

2025年8月8日、米トランプ大統領は、仮想通貨業界などへの銀行サービス拒否を禁じる大統領令に署名した。宗教や政治的信条に基づく差別的取引排除を禁止し、全国民への金融アクセス平等を保障する内容となっている。
差別的ディバンキング排除へ 仮想通貨業界も保護対象に
今回の大統領令により、米連邦銀行規制当局は、政治的または宗教的信条を理由とした金融機関の取引拒否を行えなくなる。特に「風評リスク」という曖昧な概念に基づく業務制限を是正するよう求められており、関係文書からの削除が義務付けられた。
命令は、過去に行われた違法または不当なディバンキング(※)に対する是正措置を金融機関に義務づけ、罰金や同意判決などの対応も含まれている。
ホワイトハウスは声明で「デジタル資産業界も不当なディバンキングの標的となってきた」と明記し、合法的に事業を行う米国民に金銭的負担や機会損失を与えてきたとして、こうした慣行を強く非難した。
また、前政権で実施されていた「オペレーション・チョークポイント2.0」の終了も正式に宣言された。
背景には、特定の政治的用語を使用しただけで金融機関にマークされるケースや、宗教団体が信条を理由に口座を閉鎖された事例などがある。
既にFRBは「風評リスク」を審査項目から削除する方針を示しており、今回の大統領令によって制度改革がさらに加速する構図となっている。
※ディバンキング:金融機関が政治的・宗教的理由などを根拠に、特定の個人や法人への口座開設や取引を拒否する行為。
制度的安定と信頼性の向上が市場成長の鍵に
この大統領令は、仮想通貨企業にとって法制度の明確化と安定化をもたらす意義がある。
銀行との取引リスクが減少すれば、資金調達や決済業務が円滑になり、ビジネスの持続可能性が高まる。中小企業や新興プロジェクトにとっては参入障壁の低下につながる。
一方、命令は大統領権限によるもので恒久性はなく、将来の政権交代によって同様のディバンキング慣行が再び復活する可能性も否定できない。制度の永続性を確保するには、議会による立法措置が必要になる。
また、銀行側がリスク管理上の判断として取引を控える場合、法令違反とならず、実質的な差別的取扱いが続く可能性もある。規制の意図と現場の対応とのギャップを埋めるには、モニタリング制度や苦情処理機関の強化が求められる。
今後は、仮想通貨業界が「正当な金融活動である」という社会的理解を深める取り組みが鍵を握る。透明性とコンプライアンスを高める努力が続けば、制度と産業の信頼性が相乗的に高まり、米国のWeb3市場にとって追い風となる展開が期待できる。