メルカリ、AIネイティブ企業への転換を加速 組織とプロダクトを全面刷新へ

2025年8月5日、メルカリは2025年6月期決算を発表し、営業利益が過去最高となる275億円を記録した。
一方、売上成長は目標未達に終わり、今後は「AI-Native Company」への転換を軸に事業構造と組織の刷新を進めると発表した。
AIを基盤とする新経営体制へ 全社規模で変革を推進
メルカリの2025年6月期決算によれば、売上収益は前年比3%増の1,926億円、営業利益は46%増の275億円と過去最高を更新した。
ただし、売上は当初目標の10%増に届かず、業績予想レンジ(2,000~2,100億円)も下回る結果となった。
これを受けて山田進太郎CEOは、今後の戦略の柱として「AI-Native Company」への転換を表明した。AI技術を軸とした事業構造の再編を進めることで、中長期的な成長を図る考えを示している。
同社ではすでに従業員の95%がAIツールを活用し、プロダクト開発の約70%でAIを導入済みだ。
AIチャットによるサポート基盤、不正排除、取引支援エージェントなども稼働中であり、開発・業務効率の向上が成果として現れ始めている。
今後は100名規模の「AI Task Force」が中心となり、2025年12月までにすべての業務プロセスをAIを前提とした形に再設計する計画だ。
プロダクト面でも、AIによるUX改善や越境取引支援機能などの導入が進む見通しである。
Fintech領域では、メルカード会員数が500万人を突破し、関連売上は506億円(前年比15%増)、コア営業利益は45億円(同479%増)と急成長した。
暗号資産取引所「コインチェック」との協業も発表され、決済・資産運用分野での拡大を図る。
また、米国事業(USメルカリ)では初の通期黒字化(9億円)を達成。CEO自らがUS事業の指揮をとる体制のもと、コスト削減とプロダクト強化により収益改善が進んだ。
ただしGMV(※1)やMAU(※2)は依然として減少傾向にあり、2026年度は成長回復を目指す構えだ。
(※1)GMV:Gross Merchandise Valueの略。プラットフォーム上で取引された商品の総流通取引額を指す。売上収益とは異なるが、成長指標として重視される。
(※2)MAU:Monthly Active Usersの略。1か月間にサービスを利用したアクティブユーザー数。プラットフォームの利用実態や定着度を測る指標。
AI依存の功罪とグローバル戦略の成否が今後の鍵に
メルカリの「AIネイティブ化」は、短期的な生産性向上だけでなく、将来の競争優位性を確保する上でも意義深い。
実際、AI導入により業務効率やプロダクトの改善速度は飛躍的に高まっており、従来の人手に依存した業務体制からの脱却が加速していくとみられる。
一方で、AIに大きく依存する経営体制にはリスクもある。
AIによる判断や処理が想定外の挙動を示す場合や、ユーザー体験に悪影響を与える可能性も排除できない。
海外展開については、越境取引の拡大やUS市場の反転が成長戦略の柱になると思われるが、文化・物流・規制面でのハードルは依然として高いと考えられる。
日本発のホビーやエンタメ商品に特化したBtoC展開は魅力的な一方で、競合との価格競争やブランド構築にも戦略的対応が求められるだろう。
今後の成否は、AIによる自動化に偏ることなく、ユーザー視点に立った持続的な価値の創出を両立できるかにかかっていると言える。