株式会社DOU、AI講師で125時間分の個別支援を創出 外国人学生のキャリア形成を対話で後押し

2025年8月4日、株式会社DOUは千葉県市原市の専門学校にて、AI講師によるキャリア開発授業を通じて125時間分の教育支援労働力を創出したと発表した。
外国人学生の自己理解を深め、教員の負担を軽減する試みとして注目できる。
AIが外国人学生の価値観を引き出し、思考を可視化
株式会社DOUは、専門学校「グローバル情報キャリア学院」にて、日本語を第二言語とする外国人学生を対象に、AI講師を導入したキャリア開発授業を約3カ月にわたり実施した。
AIが学生一人ひとりとの対話を通じて価値観や得意分野、将来像を引き出すことで、125時間相当の個別指導労働力を創出したという。
AI講師は、学習履歴や対話ログをもとにしたパーソナライズされたフィードバックを提供する。
学生の自己理解を促すと同時に、単語や短文レベルだった回答が、背景や経験を伴った文章へと進化していくなど、表現力の成長も見られた。
背景には、教育現場における多様性の拡大と個別最適化への要請がある。
現状は教員リソースの不足が課題とされていたが、AIの導入によって初期支援を担わせることで、教員はより深い個別指導や質の高い教育活動に注力できる体制が整えられた。
定量的な成果としては、自己理解の深度スコアが全体的に向上し、発行されたデジタルキャリア証明書(※)は2,395件にのぼった。
※デジタルキャリア証明書(VC):学習者の成果やスキルを記録・証明するデジタル形式の証明書。
「AIが人を代替する」のではなく「人の教育力を引き出す」構造を目指す
今回の取り組みの最大の成果は、「AIが教育の代替を担う」のではなく、「教員の教育力を最大限に引き出す」補助構造が実現された点にある。
DOU社は、AI講師の役割を「情報提供者」ではなく「言語化支援者」と位置づけ、対話による思考の可視化を重視した。
このアプローチにより、教員は学生の思考を深める共感的な対話や、将来像の設計支援といった本質的な教育行為に集中することができるようになった。
教育現場では、AIによって事務的・定型的支援を分担しつつ、人間だからこそ可能な深い関わりを担保する「協働モデル」が構築されつつあると言える。
将来的には、類似のモデルが他の教育機関や企業研修にも応用される可能性もあるが、個別支援の質をどう担保するか、学生のモチベーションを維持できるかといった課題も残る。
とはいえ、AIと人間の最適な役割分担を模索する動きは今後さらに広がると考えられる。
その際は、ただAIが教師を代替するだけでなく、適切な共同関係を設計できるかが重要になるだろう。