中国、エヌビディアにAI半導体「H20」リスク説明要求　米中半導体摩擦再燃の懸念

2025年7月31日、中国の国家インターネット情報弁公室（CAC）が米エヌビディアのAI半導体「H20」に安全保障上の懸念があるとして、同社に対して公式な説明と文書提出を求めたことが明らかになった。米中の半導体摩擦が再燃する可能性がある。

中国CAC、エヌビディアH20の安全保障リスクを指摘

CACは、米エヌビディアが開発したAI半導体「H20」について、国家安全保障上の重大なリスクが存在すると懸念を示した。声明によると、H20に位置追跡機能や遠隔シャットダウン機能が搭載されていると主張したが、エヌビディア側はこれらの機能を否定している。

今回の措置は、中国がAI半導体技術に対する警戒を強めていることを示すものだ。背景には、米中の通商関係改善の兆しが見え始めた中での突然のスタンス転換がある。
実際、米中の通商交渉担当者は数日前にストックホルムで協議を行っており、貿易関係の改善に期待がかかっていた。

また、米国ではトランプ政権が2025年4月にH20の中国販売を禁止したが、その後方針を修正し、同年7月にエヌビディアとAMDが一部AI半導体の中国向け販売再開を表明した。これは米政府からの出荷承認を得た上での動きであった。

しかし一方で、米連邦議会内には中国の軍事力強化やAI分野での競争激化を懸念し、先端半導体の対中輸出再開を強く批判する声も根強い。トランプ政権側はこれに対し、ファーウェイなど中国企業が既にH20を上回る性能の製品を持つと反論している。

AI半導体規制強化の波紋　企業と市場に及ぼす影響と今後の展望

中国のCACによるH20へのリスク指摘は、米中半導体摩擦の再燃を示唆しており、グローバルなAI半導体市場に大きな影響を及ぼす可能性がある。今後、両国の技術覇権争いは激化すると見られ、輸出規制の強化や審査の厳格化が進むことが予想される。

エヌビディアやAMDなど米半導体企業にとっては、中国市場が大きな売上源であるため、規制が強化されれば事業戦略の見直しが必要となる。中国側の説明要求は、製品の安全性や機能を巡る議論だけでなく、両国の政治的緊張を映す鏡とも言える。

一方で、規制強化は中国国内の半導体自給率向上を促す可能性がある。中国政府はすでに半導体の国内開発を国家戦略として推進しており、輸入制限が強まれば自国技術の底上げにつながることが期待される。

ただし、これにより世界的な半導体供給網の分断が進むリスクもあるため、企業や投資家は今後の動向を慎重に見極める必要があるだろう。
最先端技術の競争と規制の複雑な絡み合いが、今後のAI半導体市場の方向性を左右すると考えられる。

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