JPモルガンとコインベースが提携 仮想通貨関連サービスを段階導入

2025年7月30日、米仮想通貨取引所コインベースと金融大手JPモルガン・チェースが提携を発表した。
同行の約8,000万人の顧客向けに仮想通貨関連の新サービスを順次展開する。
クレジット決済やポイント交換が仮想通貨対応へ
コインベースとJPモルガン・チェースは、今秋から3段階に分けて仮想通貨関連の新サービスを導入する。
第一弾として、今秋からチェースのクレジットカードによるコインベース決済が可能となる。
続く第二弾は2026年に開始予定で、同社のリワードプログラム「アルティメット・リワーズ」で貯めたポイントを、ステーブルコイン「USDC(※1)」に交換できるようになる。米主要クレジットカードの報酬制度において、仮想通貨が選択肢に加わるのは初めての事例である。
さらに2026年以降は、チェース銀行の口座とコインベースアカウントの直接連携が実現する。これにより、従来の銀行振込や仲介を介さず、高速かつ低コストな仮想通貨取引が可能となる。
コインベースは「仮想通貨は万人のもの」とのビジョンを掲げ、ユーザー層の拡大を目指す。
※1 USDC:米ドルと連動する価格を維持するよう設計されたステーブルコイン。法定通貨との交換が可能で、価格変動リスクが小さいとされる。
仮想通貨の主流化へ 銀行とフィンテックの境界が曖昧に
本提携の背景には、仮想通貨市場の急成長があると考えられる。
2025年時点で市場規模は4兆ドルを超え、米国での規制明確化が追い風となっている。
大手金融機関は対応を迫られており、チェースの今回の動きはその象徴といえる。
また、JPモルガンが仮想通貨分野での本格展開に舵を切った背景には、競争環境の急変が理由として挙げられそうだ。
ペイパルやブロック(旧スクエア)といったフィンテック企業がキャッシュアプリなどで仮想通貨を手軽に扱えるサービスを先行して投入しているため、従来型の銀行サービスでは若年層の支持を得にくくなっているのだと考えられる。
チェースのジェイミー・ダイモンCEOは、7月の決算説明会で、ステーブルコインに関する理解不足は認めたうえで、事業参入は避けられないとの認識を示した。
同行はすでに機関投資家向けに独自トークン「JPMDトークン」の試験運用を開始しており、その延長線上として個人向け分野に展開を広げた形だ。
今回の提携は、仮想通貨を「資産」から「決済手段」へと転換する起点になり得る。特に、銀行口座と仮想通貨アカウントが連携すれば、ユーザーは為替の壁や時間的制約から解放される可能性がある。
一方で、金融業界内には慎重論も根強い。仮想通貨のボラティリティ(価格変動の大きさ)や、KYC(※2)といった規制対応の複雑さを理由に、導入を見送っている銀行も多い。
今後はシティグループやバンク・オブ・アメリカなど、他の大手金融機関のステーブルコイン参入の動向が焦点になりそうだ。
仮想通貨を“持つ”時代から“使う”時代へ、その本格的な転換が始まったと言える。
※2 KYC(Know Your Customer):顧客確認義務。マネーロンダリング対策として、金融機関が顧客の身元確認を行う手続き。