DeepL、AI音声翻訳「DeepL Voice」に機能追加 Zoom連携で音声翻訳を進化

2025年7月23日、DeepLジャパンはAI音声翻訳機能「DeepL Voice」にZoom連携を追加したと発表した。
日本市場向けにセキュリティを強化していく方針や、新言語の対応もあわせて発表しており、企業の多言語コミュニケーション支援をさらに強化する見込みである。
DeepL Voiceが多岐にわたる機能強化
DeepLジャパンは7月23日、都内で開催した「DeepL Connect:Tokyo」において、リアルタイム音声翻訳機能「DeepL Voice」の新たな拡張を発表した。
会議中のキャプション翻訳結果や全文書き起こしデータをダウンロードできるほか、企業管理者によるセキュリティ・コンプライアンス制御も提供され、エンタープライズニーズへの対応も強化された。
音声翻訳機能の対応言語も拡充され、新たに中国語、ウクライナ語、ルーマニア語を追加。
翻訳キャプションは35言語、DeepL翻訳自体もベトナム語やヘブライ語などを新たにサポートする。
また、Microsoft Teamsに続き、Zoom Meetingsとの連携も後日可能になる予定である。
これにより、世界で50万社以上が活用するZoomユーザーも、リアルタイム翻訳や書き起こしによる議事録作成機能などを利用できるようになる。
イベントにはCTOのセバスチャン・エンダーライン氏が来日し、DeepLの言語AI戦略について説明した。
NVIDIAとの協業で構築したDGX SuperPOD(※)によって、翻訳速度は10倍、出力能力は30倍に達したという。
さらに、今後はマルチモーダル対応や個別最適化モデルの研究開発も進める方針を示した。
日本市場への注力も鮮明であり、アジア太平洋統括社長・高山清光氏は「日本が強い製造、自動車、製薬、ライフサイエンス、法務向けのソリューションを提供していく」と語った。
サイボウズやNEC、東京都教育委員会などがすでに導入しており、セキュリティや精度、管理性が評価されている。
※DGX SuperPOD:NVIDIAが提供する大規模AI処理向けスーパーコンピュータシステム。高速演算により、AI翻訳や音声認識の精度向上を支える。
AI翻訳は競争力の鍵に 普及の課題はROIと導入体制
DeepLによると、日本企業の80%が「言語の壁」に起因する金銭的損失を経験しており、そのうち30%は損失額を7500万円〜3億円と見積もっている。翻訳ミスや意思疎通の齟齬が、受注遅れや契約逸失に直結している現状がある。
こうした課題に対し、リアルタイム翻訳・書き言葉支援・セキュアなデータ管理を統合するDeepLのサービスは、コスト削減と生産性向上の両立を図る企業にとって強力な武器となり得る。
一方で、導入の障壁としては、社内のAI理解度やセキュリティ要件、投資対効果の不透明さなどが浮上すると考えられる。
特に中堅・中小企業では運用負荷や教育コストが課題となりやすいため、パートナー支援や導入後のカスタマーサクセスが、成否を分ける要因となるだろう。
今後、言語AIは「補助ツール」から「競争力の中核」へ移行すると予想できる。
DeepLはその変革を主導する存在として注目を集めそうだ。