台湾AIロボット産業大連盟が発足 国家戦略で生産額5兆円達成へ

2025年7月22日、台湾・台北市で「台湾AIロボット産業大連盟」の発足式が開催された。6つの業界団体が結集し、2030年までにAIロボットの生産額を1兆台湾元(約5兆円)以上に引き上げる計画を掲げている。
6団体が結束しロボット産業の国家戦略を推進
台湾ではAIとロボティクスを核とする新産業育成に向け、主要6団体が手を組み、「台湾AIロボット産業大連盟」が正式に発足した。
中心となるのは、台湾機械工業同業公会や電機電子工業同業公会、台湾オートメーションインテリジェンス・ロボット協会など、各分野を代表する業界組織である。
今回の連盟設立は、台湾国内でのAIロボット生産基盤の強化を狙った国家規模の産業戦略と位置づけられている。農業・医療・介護・物流・災害救助など計8領域への導入促進を重点目標とし、官民連携の形で推進していく。
生産額の目標は、2030年までに1兆台湾元を超える水準に到達させることにある。これにより、ロボットの国産化率を高めるだけでなく、国際競争力の確保や輸出拡大にもつなげていく意向だ。
式典に登壇した蕭美琴(しょうびきん)副総統は、AIロボット産業を「次なる産業革命の重要な基盤」とし、「国際市場が台湾のAIロボット産業の発展を促すことで、世界で最も優れた競争地位を獲得するよう期待している」と述べた。
ロボット産業の本格展開が台湾経済と企業戦略に与える影響
AIロボット産業の本格始動は、台湾経済に多方面のインパクトをもたらすと予測される。まず、部品調達から組立、運用システムに至るまでの国内バリューチェーンが整備されることで、関連中小企業の裾野拡大が期待できる。
さらに、国際市場を視野に入れた製品設計が進めば、輸出志向のスタートアップや外資系企業の参入も加速するだろう。高齢化が進む日本や欧州などでは、介護・医療用ロボットの需要が急増しており、台湾にとっては有望な輸出先となり得る。
一方で、急速な規模拡大には技術人材の供給不足や品質保証体制の課題も残る。
特に、安全性が求められる医療・災害救助分野では国際認証の取得が不可欠となるため、事業化までに一定の時間を要する可能性がある。
とはいえ、台湾が自国の強みである精密機械や半導体とAIロボティクスを融合させることで、独自の競争優位を築けるという見方もある。経済だけでなく、政策・安全保障を含む広範な戦略分野に影響を与えるイノベーションとなることが注目される。