住友ゴムがAIで業務マニュアルを自動作成 3年で全社標準化を目指すDX施策

2025年7月16日、マニュアル作成支援サービスを提供するスタディストは、住友ゴム工業がマニュアル作成・共有システム「Teachme Biz」とAIによる自動マニュアル作成機能「Teachme AI」を活用し業務標準化への取り組みを開始したと発表した。
従来の手作業に依存していた業務手順書の作成・共有を効率化し、全社的な業務標準化を推進する構えだ。
AIで手順書の質と速度を両立 住友ゴムが全社的なDXに着手
住友ゴム工業は、マニュアル作成・共有クラウド「Teachme Biz」と、AIによるマニュアル自動作成機能「Teachme AI」(※)の導入を通じて、業務手順書の標準化と属人化排除を本格化させた。2024年2月にTeachme Bizを導入し、2025年2月にはTeachme AIの追加契約を行っている。
この導入に関する発表は、サービス提供元のスタディストが7月16日に行った。
従来、同社ではExcelやWordで作成された手順書が現場ごとにバラバラに存在し、フォーマットの不統一や内容の品質ばらつきが問題視されていた。OJTに依存する教育スタイルでは、技能の伝達効率が低く、ナレッジの形式知化が進まなかったことも課題となっていた。
今回の導入により、現場で撮影した動画や画像をもとにAIがマニュアルを生成することで、短時間かつ均質な手順書の作成が可能となる。
評価されたのは、編集の容易さや視覚的な訴求力に加え、製造現場での利用を前提とした高いセキュリティ性能である。
タイヤやゴルフ用品、テニスラケットなど多様な製品の製造・研究現場での運用が始まっている。特に新入社員教育では、自学習形式による初期業務定着の環境が整っているとしている。
※Teachme Biz/Teachme AI:スタディストが提供するマニュアル作成・共有プラットフォーム。Teachme Bizは動画や画像を用いた視覚的な手順書を作成・共有でき、Teachme AIはその作成プロセスを自動化する機能。
業務の属人化解消と技術継承へ AI活用でグローバル対応も視野
住友ゴム工業は今後、研究部門で約400件のマニュアルをTeachme Bizに移行する計画を掲げており、生産本部でも3年以内に既存マニュアルの全件を同システムに統合する方針だ。
2万アカウントという大規模な契約を活用し、国内外の拠点における運用定着も目指している。
この取り組みは、単なる業務効率化にとどまらず、技術の継承や品質の安定化を支える基盤整備とも言える。AIによって手順の可視化が進むことで、ベテランのノウハウを構造化し、新人や他部署のスタッフとも共有しやすくなる。結果として、属人化の解消や人材育成のスピード向上が期待される。
一方で、現場ごとのカスタマイズ性や例外処理への対応など、AIによる自動作成の限界にも注意が必要だ。また、導入後の運用支援やマニュアル内容の更新を怠れば、逆に形骸化するリスクもある。
今後は「分からないことがあればTeachmeを開く」という文化を全社に浸透させることで、マニュアルの利用率を高め、DXの定着を目指す。
同社の取り組みは、製造業におけるAI活用の新たなモデルケースとなる可能性があるだろう。