自ら開発したAIに職を奪われたとゲーム会社元スタッフが証言 『キャンディークラッシュ』開発元、AI導入でレイオフ

2025年7月14日、米モバイルゲーム大手Kingの元スタッフが、同社で開発していたAIツールによって自身の仕事が代替されたと証言していることが報じられた。
米メディアMobilegamer.bizの取材により、大規模レイオフの一因にAI導入があった可能性が浮上している。
Kingのレイオフ、開発したAIがスタッフの職務を代替
米マイクロソフトによる大規模な構造改革の一環として、傘下のモバイルゲーム開発会社Kingでは、2025年7月初旬に全従業員の約10%にあたる200名規模のレイオフが実施された。
Mobilegamer.bizの報道によれば、対象となったのはレベルデザイナーやUXデザイナー、『ファームヒーロー』の開発チームの約半数など、主にゲーム制作の実務を担うスタッフだった。
注目すべきは、彼らの多くがAIツールの開発・運用にも関与していた点である。
レベルデザイン部門の元スタッフは、「自分たちが開発したAIツールにチームを取って代わられた」と証言。
なお、コピーライティング部門でも同様に、AIによる業務削減が進められていたとされる。
元スタッフは会社の利益が出ているにもかかわらず、利益のためにAIへの乗り換えを行ったとして批判している。
AI活用と雇用の綱引き 効率化と創造性の共存は可能か
今回のケースは、AI導入と雇用維持のバランスに関する根本的な問いを浮き彫りにしている。
AIによる自動化が進むことで、業務が効率化される一方、従来のスキルセットでは代替困難とされてきたクリエイティブ職にまで影響が及んでいる形だ。
企業側にとっては、人的リソースに頼らずに高品質なコンテンツを安定供給できるAIの存在は魅力的であり、競争優位性の源となりうる。
Kingのような大手スタジオにとって、利益の最大化と開発コストの圧縮は投資家から求められている点でもあり、AIへの依存が深まることは有力なソリューションの一つと言える。
とはいえ、開発現場からの声には看過できない懸念が含まれている。
ある元スタッフは「フィードバックループをさらに導入するのであれば、開発者本人を削減するのは正気の沙汰ではない」と主張し、短期的な合理化が長期的な品質低下を招く可能性を指摘している。
AIが人間の職を奪うのではないかという警戒感は以前からあったが、今回、自分が開発したAIに職が奪われたという例が周知されたことで、労働者、開発側の不安が増大することは避けられないだろう。
今後、ゲーム業界においても「AIと人間の創造性をいかに融合させるか」が鍵となるだろう。
また、この件によって、他の業界でもAIによる効率化を内部で行うことへの課題が問われることになるだろう。
単なる置き換えではなく、補完関係を築く設計が求められていると言える。