TDKがエッジAIで欠陥検出を高速化 1分間に最大2000個をリアルタイム解析

2025年7月16日、TDKはグループ企業のTDK SensEIが開発したエッジAIベースの欠陥検出システム「edgeRX Vision」の提供を開始した。毎分最大2000個の製品を処理可能で、微細な欠陥もリアルタイムで見分け、製造現場の停止リスクを軽減する。
リアルタイムで微細な欠陥を検出、毎分2000個処理も
TDKは新たなエッジAIシステム「edgeRX Vision」を投入し、製造現場の品質検査に革新をもたらそうとしている。この技術は、製品の画像や動画をその場で解析し、1ミリ×0.5ミリの範囲に生じる欠陥も高精度で識別できるのが特徴だ。
システムの中核には、トランスフォーマー型アーキテクチャーを採用した統合型ビジョンモデルがある。
検出・分類・セグメンテーションといった複数の認識タスクを一体的に実行でき、アテンション機構(※)を活用して画像の重要箇所に集中する処理を行う。さらに、少数ショット学習により、少ない学習データでも新たな欠陥パターンに柔軟に対応可能で、データ準備にかかる工数を抑えられる。
処理性能は1分間に最大2000個という高速ぶりで、既存の自動光学検査と組み合わせれば、誤検出の抑止や機械停止の削減が期待される。
また、過検出によって発生する不要な機械停止や再検査といったムダを排除する仕組みも導入されている。TDKはこの仕組みについて、「わずかな停止時間の短縮効果でも大きな収益の増加につながる」と説明している。
マルチモーダル機能により、人間との直感的なインタラクションも可能で、現場の作業者による操作性の向上も期待される。
対象分野は電子部品にとどまらず、医薬品や食品など幅広い業界への展開を見据えている。
※アテンション機構:画像や文章などのデータにおいて、AIが重要な部分に注意を集中させて処理する仕組み。トランスフォーマー型AIで広く用いられている。
「edgeRX Vision」のメリットと注意点、今後の展望は
edgeRX Visionの導入は、品質保証とコスト効率の両立を目指す製造現場にとって、大きなメリットをもたらす可能性がある。特に、従来の検査装置では見落としやすかった微細な欠陥も検出できることは、製品の信頼性向上につながるだろう。
一方で、AIシステムの導入と運用には、一定の技術的知見が求められることには注意が必要そうだ。特にマルチモーダル機能を含む複合的なAIは、現場のオペレーターにとってブラックボックス化しやすく、トラブル発生時の初期対応が難航する恐れがある。
また、欠陥検出をAIにすべて委ねることは、人間の直感的判断力や経験値が軽視されるリスクもある。
今後は、日本国内の製造業にとどまらず、海外拠点での導入も視野に入ると予想できる。
エッジAIによる品質検査の主流化に拍車がかかりそうだ。