映画『プーチン』8月1日配信開始 主演俳優の顔を全編AI加工、映画史上初の試みに注目

映画『プーチン(原題:Putin)』が、2025年8月1日より日本国内でデジタル配信されることが、7月14日に明らかになった。
主演俳優の顔を全編にわたりAIで加工するという映画史上初の試みに注目したい。
AIで“プーチンの顔”を再現 歴史と虚構が交錯する異色作
ポーランド出身のパトリック・ベガ監督が手がけた映画『プーチン』は、主演俳優の顔全体にAI技術を用いてプーチン大統領の容貌を再現したことで、国際映画界でも話題となった作品である。
これは通常のCG加工とは異なり、シーンを通じてリアルタイム生成された“AIプーチン”が登場するという極めて特異な演出で、倫理や表現の境界を揺るがすものと評価できる。
ストーリーは2026年、瀕死の状態でモスクワ中央臨床病院に収容されるプーチンの姿から始まり、ソ連崩壊やチェルノブイリ原発事故、KGB時代などを経て、彼の政治的台頭と権力行使を描く半自伝的構成となっている。
エリツィンに免責と引き換えに大統領就任を迫る場面など、史実を基にしつつもフィクションを織り交ぜた演出が印象的だ。
本作の配信会社HARKは、配信に先立ち7月30日・31日にオンライン試写会を実施予定だ。試写情報は7月14日正午に、同社公式X(旧Twitter)アカウントで公開されている。
AI演出が生む新たな映像体験 リアリズムの進化と倫理の揺らぎ
映画『プーチン』は、AI技術を俳優の演技と融合させたことで、これまでにない映像体験を生み出したと言える。従来の特殊メイクやCGとは異なり、俳優の表情や動作にリアルタイムで“プーチンの顔”を重ねることで、観客に強い説得力を与えるだろう。
加えて、AIが生成する“顔の演技”は人物の再現性だけでなく、演出上の意図や緊張感を強調する装置としても機能している。
たとえば、冷徹な目線や無表情の中に浮かぶ微細な動きは、観客に一種の不安や緊張を呼び起こすと思われる。これは、演技に依存せずともキャラクターを成立させる可能性を示しており、俳優の役割に対する価値観すら変容させかねない。
一方で、デメリットとして見逃せないのは倫理面での懸念だ。
たとえ合法的な手続きを経たとしても、現職国家元首の顔をAIによって“演出する”ことには意図せぬ誤解や政治的影響がつきまとう。特定の政治的印象を操作的に強調してしまえば、創作の域を超えてプロパガンダ的な側面すら帯びかねない。特に本作のように史実とフィクションが交錯する構成では、その境界を観客が明確に認識できるかが問われるだろう。