テスラ車にxAIのAI「Grok」搭載へ 米国で順次展開、会話型機能が強化

2025年7月10日、米起業家イーロン・マスク氏は、自身が創業した人工知能企業xAIのAIチャットボット「Grok(グロック)」が、テスラ車にまもなく搭載されるとX(旧Twitter)で発表した。その後12日、テスラ社もGrokを同社車両に搭載することを明らかにした。
AI「Grok」がテスラ車に搭載
マスク氏は10日、X上で「Grokが近々にテスラ車にやって来る」と投稿し、「遅くとも来週だ」と明言した。これは、同氏が率いるxAIの最新プロダクトであるAIチャットボット「Grok」を、テスラの車載システムに統合する計画がいよいよ始動することを意味する。
発表の数時間前には、マスク氏とxAIのチームがビデオライブ配信を行い、Grokの新バージョンを紹介。音声による自然な会話機能の改善や、OpenAIをはじめとする他社のAIモデルと比較して優れた性能を持つ点を強調していた。
12日にはテスラが正式にGrok搭載を発表。対象車種は「Model S」「Model 3」「Model X」「Model Y」「Cybertruck」で、AMD製プロセッサを搭載し、ソフトウェアバージョン「2025.26」以降に対応する。新型車両については、同日以降の納車分に標準搭載されるとのことだ。
Grokは、ドライバーとの自然な対話を可能にするが、従来の音声コマンドとは異なり、車両操作に直接関与しない。Grokが車両へ命令を発行することはなく、会話内容も匿名化されたうえで送信される。個人データとの紐付けは行われないという。
Grokの導入は、売上減少に悩むテスラにとって技術的な差別化の一手でもある。昨年マスク氏は、テスラがxAIに対し50億ドルの投資をすべきかXで問いかけたこともあり、両社の関係強化を望む一部株主の声が背景にあるとみられる。
テスラ×xAIの連携が加速 期待と懸念が交錯する今後の展開
Grokのテスラ車搭載は、同社のAI戦略を一段と押し進める重要なステップといえる。電気自動車市場の競争が激化する中、xAIとの連携によって「AI搭載車」という差別化要素を前面に打ち出す狙いがあるとみられる。
一方、マスク氏による複数企業間での経営資源の共有に対しては、投資家やガバナンス面での懸念も存在する。特に、テスラがxAIに本格投資するとなれば、取締役会や株主の承認が必要となる上、企業間の利益相反リスクも無視できない。
今回のGrok搭載によって、AIのUI(ユーザーインターフェース)としての車の可能性が広がることは間違いない。すでにGoogleやAppleも車載OSの展開を進めており、Grokが車載AI競争に新たな風を吹き込む可能性がある。
ただし、実装初期段階では音声認識精度や誤動作リスク、プライバシー保護の問題など技術的課題も予想される。
マスク氏の野心的な構想により、テスラは単なる自動車メーカーから「AIモビリティ企業」へと進化を遂げようとしていると言える。その成否は、xAIとの融合がどれほど実用性と競争力をもたらすかにかかっている。