灘高生がAI企業を創業 AI活用で気象予測や配送支援プログラム開発

2025年7月3日、神戸市の灘高校に通う高田拓人さん(18)が高校2年時にAI技術を活用したプログラム開発会社「アイナミック」を創業していたことが、報道により明らかになった。
現在は1人で経営と営業を担い、民間企業からの開発案件も受注している。
高校2年時に法人設立 AI活用した開発事業を展開
兵庫県西宮市在住で、現在灘高校3年の高田拓人さんは、2023年秋、高校2年生の時にAI関連事業を手がける「アイナミック」を創業した。
資本金は30万円で、両親の同意のもと法人登記を行い、現在も従業員を雇わず1人で経営を続けている。
起業に至る背景には、中学生時代に参加した「日本情報オリンピック」での経験がある。入賞は果たせなかったが、仲間との能力差に直面し、自身の適性を模索する中で、「何かに挑戦し続けることの意味」に気づいたという。
高校入学後、東京大学の公開講座でAIの社会的応用に触れたほか、東京のIT企業によるオンラインインターンシップにも参加。週12時間の開発業務に携わり、プロジェクトリーダーとしての役割も経験した。
起業後は、東京大学の研究室から紹介を受けた投資会社による会計支援も得ながら、事業を推進。今年に入りアプリ制作会社から業務を受注し、気象予測や配送効率化に関するAIプログラムの開発を行っている。
学校生活では、生徒会長として1年間活動するなど、多方面での経験を積んでいる。
AI実装を進める若年起業 現場起点の実践が示す可能性
AI技術の社会実装を高校生自らが担うという点で、本事例は教育や人材育成の文脈において注目に値する。企業や大学が主導する従来の枠組みとは異なり、現場起点の実践を通じて、AIの実用性と柔軟な応用力が可視化されたケースといえる。
実際に、高校生という立場から気象予測や物流の最適化といった実務領域にAIを導入したことは、既存企業にとっても示唆的だ。小規模ゆえの開発スピードや、ニッチな課題に対する機動的な対応力は、大規模な組織には持ち得ない競争力となる可能性がある。
一方で、AIプロダクトの提供においては、信頼性やデータ品質の確保、法規制への適合といった側面も不可避であり、年齢や規模による限界もある。開発者としてのスキルだけでなく、社会的責任を問われるフェーズにおいては、支援体制や法制度の整備も不可欠とされる。
今後、AIの現場導入を個人や小規模事業体が主導する流れが広がるとすれば、それは技術的革新に加え、教育・経済・規制の領域をまたぐ新たな支援の在り方を問い直す契機ともなるだろう。灘高生発の取り組みは、その可能性を端的に示している。