英アーム、AI特需でデータセンター顧客急増 設計採用企業が7万社に

2025年7月9日、英半導体設計大手アームが、同社の設計を採用した半導体を使用するデータセンター顧客が2021年以降で14倍に増加し、7万社になったと報じられた。
生成AIブームが追い風となり、データセンター事業を急成長させているようだ。
AI需要が追い風、データセンター顧客14倍に拡大
ソフトバンクグループ傘下のアームは、同社の半導体設計を採用したデータセンター関連企業が2021年以降で14倍に増え、7万社に達したとロイターに明かした。
背景には生成AIの急拡大による高性能・省電力なチップへの需要の高まりがあるようだ。
アームは従来、スマートフォン用の省電力チップで知られていたが、近年はレネ・ハースCEOのもと、データセンターやPC向け市場への進出を強化している。
同社によれば、同社設計のチップ上で動作するアプリケーションの数も2021年から約2倍に増加し、900万に到達したという。
成長が著しい一方で、業界全体が恩恵を受けているわけではない。
アームはAI需要により売上拡大が続くものの、PCやスマートフォン向けの半導体市場は依然として伸び悩んでおり、半導体業界には二極化の様相が見られる。
アームの快進撃、半導体市場の勢力図を塗り替えるか
アームの躍進は、長らくインテルやAMDが主導してきたデータセンター市場に新たな競争軸をもたらしていると推測できる。従来のx86アーキテクチャーに対し、アームは省電力性と柔軟な設計ライセンスを武器に、クラウド事業者やAI開発企業からの支持を広げている。
今後、データセンターでのアーム採用がさらに進めば、サーバー分野での設計思想が根底から変わる可能性がある。
すでに米アマゾンのAWSやマイクロソフトも、独自のアームベースのチップ開発を進めており、特定ベンダー依存からの脱却を図る動きが加速していることが窺える。
一方で、課題も残る。
AI向けチップの性能競争は激化しており、NVIDIAのように独自GPUを展開する企業との差別化には、さらなるアーキテクチャーの最適化とエコシステム構築が必要になるだろう。
加えて、ライセンスモデルの多様性が収益の予測性を下げるリスクも考えられる。
それでも、AI・クラウド時代において「電力効率」と「柔軟性」を両立できるアームの優位性は明らかであり、今後の技術革新と市場変動次第では、データセンター業界の覇権構造そのものを塗り替える可能性も十分にありそうだ。
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