スペースデータと米レッドワイヤーが提携 宇宙向けAIとデジタルツインで共同開発へ

2025年7月9日、宇宙関連技術を手がけるスペースデータ(東京都港区)と米Redwire Spaceは、AIやデジタルエンジニアリングの分野で連携する覚書(MoU)の締結を発表した。
ISSや月面探査に向け、AI技術や仮想検証を融合
両社は、デジタルツイン(※)や人工知能(AI)、ロボティクスといった技術を軸に、国際宇宙ステーション(ISS)から深宇宙探査までを視野に入れた多層的な連携を進めるという。
具体的には、スペースデータが保有するデジタルツイン技術をRedwireのデジタルエコシステムに統合し、ISSなどのミッション支援に活用する。
Redwireのデジタルエンジニアリング環境「DEMSI」は、同社独自のノーコード統合フレームワーク「ACORN」や、実機との連携に対応する高精度シミュレーション機能を備え、ミッション成功の事前検証を可能にする。これにより、仮想空間での設計・運用・検証を一貫して行える環境が構築され、国際宇宙ステーション(ISS)を含む各種宇宙プロジェクトへの応用が期待されている。
また、米航空宇宙局(NASA)が推進する商業LEO(低軌道)利用に関連するコンポーネントやシステム、ソフトウェアの開発において、協業の可能性を探るという。
このほか、地球低軌道(LEO)、月周辺空間(Cislunar)、深宇宙探査における共同ミッションやサービスの実現も検討対象に含まれている。
さらに、宇宙向け人工知能(AI)およびロボティクス技術を活用した共同研究も推進し、次世代の宇宙インフラ開発に貢献していく構えだ。
スペースデータが提供する「ISSシミュレーター」は、実際のISSハードウェアと同一コマンドによる動作再現が可能であり、その精度をすでに実証済みだという。
※デジタルツイン:現実空間の設備や環境を仮想空間上で再現し、シミュレーションや検証に活用する技術。製造業や宇宙開発での利用が拡大している。
協業が広げる宇宙ビジネスの可能性
今回の連携により、AIとシミュレーション技術を融合することで、宇宙ミッションの計画段階からリスク分析、運用支援までを仮想空間上で完結させることが可能になると考えられる。これにより開発コストや実証試験の負担が軽減され、参入ハードルの高い宇宙ビジネスにおいて新たな市場機会が生まれると期待される。
スペースデータとRedwireの提携は、こうした構造変化を後押しする動きとして注目される。とくにデジタルツインと人工知能(AI)を統合した仮想検証環境は、有人飛行や長期探査のような高リスク領域での有効性が高く、今後の需要拡大が見込まれるだろう。
RedwireはNASAや欧州宇宙機関(ESA)との連携実績を持ち、国際プロジェクトへの橋渡し役としての役割も期待される。日本発の技術がこの枠組みに組み込まれれば、国内スタートアップにとっては大きな展開機会となり、宇宙産業全体の底上げにもつながる可能性がある。
一方で、技術統合や共同研究の成果が現れるまでには時間を要し、宇宙向けAIやロボティクスの開発には高度な要求性能への対応が求められる。法制度や安全基準の違いも含め、実用化には継続的な調整が必要になるだろう。