青森県選管がAIで制作した啓発ソング公開 若者の投票率向上めざす

2025年7月1日、青森県選挙管理委員会は、20日投開票の参院選に向け、若年層の投票率向上を目的とした啓発ソングを発表した。作詞・作曲から歌唱までを生成AIが担う全国選管初の試みで、若者との接点づくりを模索する。
AIが作詞・作曲、若者向け啓発ソングを制作
今回発表された啓発ソング「私の選択」は、若年層の低投票率に対応する新たな施策として、対話型生成AI「ChatGPT」と音楽生成AI「Suno」を活用し制作された。
曲の歌詞は、若者が未来への意思を一票に込めることを促す内容となっている。歌詞は3番まであり、青森の自然や地域性に焦点を当てているとされる。
各楽曲は約4分で、AIが生成した原案をもとに県選管の職員が微調整し、完成させた。この楽曲は今後、県内高校の校内放送や街頭放送で流される予定である。
ジャンルは女声Jポップ調、男声ロック調、男声ジャズ調の3パターンがあり、現在、ウェブサイトで公開されている。サイト上では「気に入った1曲に投票する」企画を実施。投票という行為に親しみを持たせることで、若者のハードルを下げるのが狙いとみられる。
青森県では、10代から20代前半の投票率が全国平均を下回っており、県選管は若者の政治的関心を高める方法を模索してきた。
啓発ソングの制作はその一環であり、「今まで通りのやり方では若者にスルーされてしまう」と語った平尾悠樹事務局長の言葉にも危機感がにじんだ。
「スルーされない選挙」へ AI活用が若者の関心呼ぶ可能性
今回のように生成AIを活用した選挙PRは、Z世代が親しみやすさを通じ、政治参加への関心を喚起する新たな試みと言える。エンタメ的な要素を取り入れることで、「選挙=堅苦しい」というイメージの払拭にもつながる可能性がある。
また、生成AIによるコンテンツ制作は、限られた予算や人員でも柔軟に展開できるという点で、他の自治体の参考にもなりうるケースだろう。
一方で、こうした啓発手法はあくまで「認知の入り口」にすぎず、実際に投票所へ足を運ぶ行動にまでつながるかは不透明だ。
そのため、AI技術を活用した啓発施策を一過性の話題づくりで終わらせず、たとえば投票先に迷う若者への情報提供、政治と暮らしの関係を伝えるコンテンツなど、実効性のある取り組みへの需要が高まる可能性がある。
加えて、啓発にエンタメを用いることへの慎重な見方もあると考えられる。政治的中立性や表現の適切さを担保する必要性は依然として高い。
特に今後は、生成AIの特性を活かしたパーソナライズや対話的コンテンツなど、双方向性のある仕組みへの発展が鍵となるだろう。単なる楽曲制作にとどまらず、ユーザー参加型の体験設計やデータに基づく改善サイクルの導入など、AIを起点とした啓発の高度化が期待される。
「私の選択」視聴ページ:https://senkyopr.pref.aomori.lg.jp/campaign_song.html