渋谷で「AIソクラテス」と哲学対話 悩み相談イベントが6月28日に開幕

2025年5月29日、AIを活用した哲学的対話イベント「BAR・AIソクラテス展」の開催が発表された。会期は6月28日から7月21日までで、東京・渋谷の「マイラボ渋谷」にて実施される。
西洋古典に基づく対話型AI「AIソクラテス」と会話し、人生や恋愛の悩みに哲学的な気づきを得られる体験型イベントで、入場は無料となっている。
AIと哲学的対話を体験 渋谷で「BAR・AIソクラテス展」開催へ
イベント「BAR・AIソクラテス展」が、渋谷センター街のイベントスペース「マイラボ渋谷」で2025年6月28日からスタートする。
主催は、映像制作やイベントプロデュースを手がけるディレクションズと、名古屋大学・桜美林大学・東京大学の研究者らで構成される「ヒューマニテクスト開発チーム」である。
このイベントで使用されるのは、西洋古典学に特化したAI対話システム「ヒューマニテクスト」だ。古代ギリシャを中心とした哲学テキスト約1000作品を学習させた大規模言語モデルを活用し、参加者の相談に対して哲学的な視点から回答を行う。
AIは「ソクラテス」仕様にカスタマイズされており、渋谷を意識したビジュアルと現代風の語り口で、参加者とリアルタイムで対話できる。マイク越しに5分程度の会話を体験でき、週末と祝日には音声対応による応答が可能となる。
また、対話をもとにオリジナルの言葉やカクテルイラストを描いた「カクテルカード」が配布されるほか、来場者の悩みとAIの応答例、関連ビジュアルも展示される。
参加は予約不要で、混雑時には整理券が配られる。
テクノロジーがもたらす内省の場としての可能性と課題
本イベントは、AIを通じて自らの悩みを言語化し、哲学的視点から思考を深めることを目的としており、「次世代の対話体験」の在り方を探る意欲的な試みである。
従来のAI活用が業務支援や利便性向上に偏りがちだったのに対し、「AIソクラテス」は内面的な探求を促す役割を担う。
メリットとしては、AIが非評価的な立場で応答することで、ユーザーは自身の考えを安心して開示しやすくなる点が挙げられる。
また、哲学的な文脈からの助言は、単なる問題解決ではなく「自分自身を見つめ直す契機」として機能しうる。
一方で、課題もある。
AIの回答はあくまで過去のテキストデータに基づく確率的な言語生成に過ぎず、個別の感情や状況を正確に汲み取るわけではない。哲学的に“深い”対話に感じられるかどうかは、体験者の知識や受け取り方に大きく依存すると思われる。
将来的には、こうした“哲学エージェント”が教育やメンタルケア分野で活用される可能性もあるが、その際には倫理面や回答の透明性といった要素の精査が不可欠となるだろう。